重力とクーロン力の中心は違ってる?

重力とクーロン力(静電気力, 電荷の間に働く力)には、似たところがあります。
どちらも空間を隔てて、距離の2乗に反比例する大きさで作用するというところです >> Wikipedia:逆2乗の法則
先端の物理では「重力と電磁気力を統一しよう」などと言われていますが、
ここで問題にしたいのは、そんなに難しい話ではなくて、もっと基本的なことがらです。

1.重力の中心は球の中心
たとえば地球の周りを回る月といったものを考えたとき、
学校で教わるときは、まず地球と月を、それぞれ1つの「質点」と見なします。
しかし、大きな地球を1点にまとめてしまっても問題ないのでしょうか。
* 地球は質点と見なしてよいのか >> [id:rikunora:20090126]
* 僕が物理と数学にハマリだしたきっかけ - 重心と質点の話
>> http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f78dd46bca9c95beb847bf60b9168fa3
きちんと計算してみると、実は球体であれば、全体から及ぶ重力を球の中心で代用できることがわかります。
つまり「重力の中心は球の中心」なのです。これが一点目。

2.2つの点電荷の作る等電位面
次に、クーロン力の方を見てみましょう。

この図は、プラスとマイナス、2つの点電荷を置いたときの等電位面の様子を示しています。
以下のページからお借りしました。
* JAVA VIRTUAL LAB >> http://www.asahi-net.or.jp/~zn6t-szk/eForce11.html (Javaアプレット)
さて、この図をよく見てもらうとわかるのですが「点電荷は等電位面の中心にはなっていません」。
等電位面に対して、いくぶん内側に、お互いに引き合うように寄っています。
ということは、もしこの等電位面に沿った形で金属の塊を置いたなら、
「荷電の中心は、塊の中心よりも内側に寄ってくる」ということになります。これが二点目。

以上、1点目と2点目の事実からすると、結局のところ
「重力とクーロン力では、中心の位置が違っている」のでしょうか?
これが今回の問題です。

ちなみに、数式の上では重力とクーロン力は非常に似通っています。
際立った違いは、
 ・電荷にはプラスとマイナスがあるが、重力に反対符号(マイナス)は無い。
 ・大きさ。クーロン力に比べて、重力は極端に弱い。
といったところです。
両者のポテンシャルの概形は、こんな感じです。

* 重力ポテンシャル

* 静電ポテンシャル

繰り返しますが、式の上では符号以外、同じ形をしているのです。

さて、問題の謎解きですが・・・今回は答をこの場には書きません!
私自身、答がわかるまでかなり悩みました。
なんか悔しいので、同じ悩みを分かち合いましょう (^^);
たぶん、分かる人には一瞬で分かるはず。
以下に、嘘とも本当ともつかない意見を適当に並べておきます。

A.もともと重力とクーロン力は別物なのだ。
  中心が異なっているという事実が、正に両者の違いを表しているのだ。


B.電荷はプラスとマイナスだけれど、重力は同一符号になっている。
  両者の違いは、そこから来ていると思う。


C.電荷は導体の上を自由に動けるけれど、重力は動けない。
  例えば地球の質量分布が変化するわけではない。
  中心がずれるのは、そのため。


D.よく見ると、電荷の作る等電位面は球ではなくて、歪んでいるぞ。
  だから地球と正確に比較できないのでは。。。


E.式の上で似ているからと言って、実物が同じだとは限らないじゃないか。
  理屈ばかりの数式なんて、あまりアテにならないんだ!


さあ、正しいのはどれ?

関連して、最近おもしろかった本の紹介。

「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)

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これは熱い、おもしろい! こんなことが、実験で確かめれらるのかぁ!!
力についてもよくわかる。