朝顔の蔓巻き探索

夏の風物詩と言えば朝顔
我が家でも朝顔を植えて、最近は毎朝、花が咲くのを楽しみにしています。
我が家の朝顔は、上の階からつり下げたヒモに巻き付いて伸びています。
伸びるにつれて、朝顔はときどき枝分かれして側芽を出すことがあります。
側芽はまるで、他に絡みつけるものが無いかどうか探すような成長の仕方をします。
ときには30cmくらい、巻き付いているヒモから離れるようにヒョロヒョロと遠くまで伸びてゆきます。

しかし、残念なことに空中に張ったヒモの隣には、他に絡みつけるものはありません。
するとどうなるか。
側芽はある地点であきらめて、またもとのヒモに戻ってくるのです。

これではちょっとかわいそうなので、朝顔の隣にもう1本、新しいヒモを貼ってみました。
すると、横にはみ出した側芽はやがて新しいヒモを探し当てて、
新しい場所に向かって絡みつくようになります。

さて、ここで不思議に思うことがあります。
側芽は1本だけではなく何本もあるのですが、その中の1本がたまたま「新天地を発見」すると、
続いて残りの側芽も新天地に向かってゆくように見えることです。
まるで、最初に新天地を見つけた1本が、後から来る側芽に
「ここに新らしい場所があるぞ」と教えているかのようです。
そのようにして見ると、実は新天地が発見できなかった場合も同じように、
「こっちに来ても何も無いぞ」と本体に伝えているように見えます。
1本の側芽が別の場所に絡みつくことに失敗して撤退すると、
同じ方向に伸びようとしていた他の側芽も同時にあきらめるように見えるのです。

つまり朝顔は、あたかも1個のめくらの動物が手探りをするように
絡みつく先を探しているのです。
もし朝顔の1年が、我々人間にとっての1時間のように感じられているのだとしたら、
朝顔は正に「手探り運動」をしているのではないでしょうか。
神経を持たない朝顔の、一本の側芽からもう一本の側芽に向けて、
メッセージを伝達することが果たして可能なのか?
調べてみると、実際のところ朝顔は周囲を探るように茎を延ばしているようです。
* アサガオの生理学 -- つるの巻き方
>> http://www.sc.niigata-u.ac.jp/biologyindex/wada/p33/p33-1.html
例えば、頂芽(一番てっぺんまで伸びているメインの茎)がもうこれ以上伸びられなくなると、
「頂芽優勢が打破されて、かつての頂芽は成長を止め、代わりに側芽が成長を始める」
のだそうです。

調べるといろいろ出てきます。
* アサガオのつるの回旋転頭運動の記録
>>http://www2.tokai.or.jp/seed/seed/seibutsu2.html.html
朝顔って、こんな「高速」に動いていたとは知らなかった。
* リバコミ! -- よじのぼれアサガオ
>> http://livacomi.jp/item_1533.html
* つる植物が支柱をよじ登るために必要な遺伝子の発見
>> http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/topics/topics_0512.html
朝顔が重力を感じる仕組みは、ここまでわかっている。
しかしながら、側芽から側芽へメッセージが伝わる、という話は特に見かけませんでした。

可能性としては2つあると思います。
1.朝顔の回旋転頭運動は、想像した以上にずっと速い。
 一方、私は1日1回、朝にしか蔓の様子を観察していない。
 朝顔の側芽がそれぞればらばらに運動していたとしても、
 翌日になれば「一斉にそろって」運動したように見える。
2.朝顔は何らかの方法で、枝から枝へとメッセージを伝達している。
 例えばてっぺんの枝がダメになれば横に芽を出すように、
 朝顔全体が1個の生き物として動いたっていいではないか。
つまらないけれど常識的なのが1.
根拠は無いけど何だかおもしろそうなのが2.

例えば私たち人間社会の動向は、朝顔の手探りに似たところがあると思うのです。
お互いが直接示し合わせたわけでもないのに、
なんとなくこっちの方が良さそうだと思える分野に一斉に側芽を延ばす。
あるいは、なんとなくこっちはダメそうだと思える分野からは、
誰かが直接伝えたわけでもないのに、潮が引いたように撤退する。
人間社会の流行の様なメカニズムが、朝顔の中にもあったらおもしろいと思うのです。