人間に薬品はどれだけ必要か(3)

(1)前々回:シャンプーは使わない方が良い >> [id:rikunora:20100714]
(2)前回:ハミガキ粉だって、無くてもかまわない >> [id:rikunora:20100716]
今回はその続きで、目薬についてです。

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3.目薬
シャンプーやハミガキ粉に比べれば、目薬を常用している人は少ないかと思いますが、
私はほぼ毎日、習慣的に目薬を使っています。
目薬を使うようになったのは、パソコンの画面を見る仕事をするようになってからです。
一日中モニター画面を見ているわけですから、とにかく目が疲れる。
なんとか疲れがとれないものかと思い、目薬を試してみることにしました。
薬屋に行って事情を話すと、「それならいいのがありますよ」ということで、
一番高そうな目薬を勧められました。
ケチな私が難色を示すと、「確かにお値段はちょっと高いのですけれど、とても良く効きます」とのこと。
目は大事だし、よく効くのであれば値段には代えられないと思い、結局その高級目薬を購入しました。
実際に使ってみるとその目薬、確かに素晴らしい効果がありました。
目の疲れが引いて、苦もなくモニターが見れるようになりました。
以降、私はすっかりこの目薬がお気に入りとなり、毎日常用するようになったのです。

私がパソコンの仕事を始めた頃は、まだ液晶画面は珍しく、ブラウン管のモニターが主流でした。
目薬の他に、もう1つ効果があったのが「紫外線カットのOAサングラス」でした。
とにかく目が疲れる体質だったので、私にとって目薬とサングラスは無くてはならないものでした。
その後、モニターが液晶画面に代わると、まずサングラスが不要になりました。
目薬の方はしばらく続けていたのですが、最近、シャンプーを止めたのと同じタイミングで
思い切って止めてみることにしました。(半年ほど以前のこと)

目薬を止めてから最初に表れた変化は、目やにが出るようになったことです。
朝起きたとき、それまではほとんど無かった目やにが目尻に現れるようになりました。
10日ほどすると、目やにの量はますます増えてゆきました。
きっと目薬が無くなったので、目が本来持つ除菌機能が働き始めたのだろう・・・
始めのうちは、そんな風に思っていました。
ところが、目薬廃止の影響は、単に目やにだけに留まりませんでした。
やがて、目尻が少し赤くなってきて、視界が多少ぼやけるようになってきました。
目の表面が汚れてきている感じです。
ひどい時には、眼球の目尻側の縁が赤く充血するようになってきました。
どう考えても、悪化しています。
1ヶ月程で、私は目薬無しの生活をあきらめて、再び使用を開始しました。
再び目薬を使い始めると、充血も目やにもなくなって、元の目の状態に戻りました。

試しに止めてみて分かったのは、もはや私は目薬無しにはやっていけない体質になった、
ということだったのです。
目薬の効果があまりにも素晴らしいものだったのか、それとも目薬依存症なのか。
おそらくパソコンの仕事を止める日が来るまで、私はこの目薬を手放すことができないでしょう。
1つ確認できたのは、目薬を止めたときに出た症状が、昔、最初に感じていた目の疲労感ではなくて、
目やにと充血であったということです。
目薬を止めていた時期に、特別な疲労感は感じませんでした。
きっと、モニターが液晶になったので疲労しなくなったか、
あるいは目がモニターに慣れて疲れなくなったのでしょう。
しかしながら目薬を常用するうちに、もともと眼が持っていた殺菌能力は失われて
すっかり目薬に頼るようになってしまった、というわけなのです。


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*.化粧品
私自身が試していない薬品で、止めた方が望ましいと思われるものに化粧品があります。
試しに女性の方に聞いてみたところ、ある人は
「確かに医学的に良いとも思えないが、止めるわけにもいかない」
と言っていました。
化粧とは、例えて言えば「男性のネクタイのようなもの」だというのです。
ネクタイなどという暑苦しいものを、好きで付けている男性は少ないだろうけれど、
それでも多くの男性が習慣的にネクタイしている。
化粧も似たようなもので、たとえ好きでなくても、
化粧しないとみっともないので習慣的に行なっているのだそうな。
(中には好きでやっている人もいる。その割合も、きっとネクタイと似ている。)
化粧にはクレンジングという、古い化粧品や油汚れを落とす作業があって、
そのために専用のクレンジング剤というものがあります。
ところがこのクレンジング剤ほどバカバカしいものはなくて、
もともと皮膚にあった油分を取り除いて、代わりに人工の油で上塗りをするのだそうです。
当然ながら、クレンジング剤と上塗りする化粧品はセットになっており、
一度「クレンジング->上塗りサイクル」に入ると抜け出せなくなるのだそうです。
多分、「化粧品の中で本当に健康にも良いのは天然オイルだけ」だろうと。
そこまで良くわかっているのなら、化粧なんてさっさと止めちまえと思うのですが、
やはりネクタイよろしく社会的な習慣からは抜け出せないということらしい。うーむ。


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薬品は、できれば使わないに越したことはありません。
私の場合、シャンプーとハミガキ粉については使用を止めることができました。
しかし目薬のように、使用停止できなかった薬品もありました。

もうずいぶん以前の話になりますが、私の学生時代に、無農薬農法を試みているサークルがありました。
以下はそのサークルに居た友人の話です。
無農薬農法を実践するため、友人は農家で使っていなかった小さな田んぼを借りました。
その借りていた田んぼは、余っている半端な土地だったため、1続きではなくて2カ所に分かれていました。
ところが、農薬が入っているか、いないかを誰よりも鋭く見抜いたのは雀でした。
他の農家の田んぼに全て農薬が入っていた中、この2カ所の田んぼだけは無農薬。
どうなったか。当然、雀という雀が一斉に、この無農薬田んぼに集まってきたのです。
まず1つめの田んぼが集中攻撃に遭いました。
これはたまらん、ということで必死になって脅かして、雀を1つめの田んぼから追い払うと・・・
飛び立った雀たちは、今度は2つ目の田んぼに集まってくるではありませんか。
これはたまりません。今度は2つ目の田んぼに行って、雀たちを脅かして追い払う・・・
2つ目の田んぼを飛び立った雀たちは、また1つ目の田んぼに戻ってきて、集中攻撃する。
以下、その繰り返し。。。
結局のところ、2つの無農薬田んぼはさんざん雀に荒らされて、惨憺たる状況に陥ったのです。

あの田んぼを見てからというもの、私は無農薬という理想がいかに困難であるかを知りました。
消費者は、安全とか、おいしいとか好き勝手にゴタクを並べますし、
もちろん消費者の権利を否定することもできません。
ただ、ロクに畑を耕したことすらない私からすれば、完全な無農薬はとても高い目標に思えます。

シャンプーやハミガキ粉のような薬品と農薬は、それぞれ別の話ではないか。。。
そう言われてみれば、確かにそうなのかもしれません。
しかし私には、皮膚を健康に保つことと、土地を有用な状態に保つことは、どうも同じ仕組みに思えるのです。
最も身近な「自然」である自分の皮膚すら健康に保てないような人が
エコや自然保護を声高に訴えても、いまひとつ説得力に欠く気がします。

しかしながら薬品ゼロの生活は、現実的にはもう不可能でしょう。
目薬も、化粧品も、農薬も、もはや「抜けられないサイクル」に突入しています。
結局のところ、どうすれば良いか。
おそらく「良いものを、ちょっぴり使う」というのが、現状では最良の策だろうと思います。
シャンプーの例で言うと、安物の合成系を毎日大量に使う、というのが最悪の使い方。
できることなら、全くシャンプーを使わずに済ませるのがベスト。
しかし、人によってシャンプー無しは難しいかもしれない。
そんなときは、よく配慮されたシャンプーを少しだけ、あるいはたまに使うのが良いと思うのです。
「良いものを、ちょっぴり使う」というのは、メーカーにとっても救済策に成り得ます。
もし3日に一度しかシャンプーを使わないのであれば、3倍の価格のシャンプーでも割に合います。
メーカーの側も「安物を大量に売りさばく」という方針は改めて、
高くても構わないので、本当に良いものを少量だけ売る、という方針に切り替えた方がいい。
高いシャンプーであれば、差別化や付加価値を付けることもできるの思うのです。
それでは、安物を駆逐して、本当に良い品物だけを残すには、どうすれば良いか。
答は簡単で、「みんなで体験談をブログに書き連ねる」ことでしょう。
ググれば真実が分かる、という状態になれば、自ずと良いものだけが残ってゆくはず。

「皮膚は考える」という、とてもおもしろい本があります。

皮膚は考える (岩波科学ライブラリー 112)

皮膚は考える (岩波科学ライブラリー 112)

詳しい内容は手にとって読んでもらうことにして、1つ着目する点は、
この本の著者が化粧品メーカーの研究員であったということです。
私は化粧品ほどバカバカしいものは無いと思ってはいますが、
この著者の作った薬品であれば、試しに付けてみてもいいかな、と思いました。
もはや現実的に薬品ゼロの自然に帰れないのなら、せめてとことん自然の仕組みを調べて、
可能な限り無害な薬品を開発する。
これが現実的に残された道であろうと思います。