超球の5と7は意外につまらない

2次元の円の面積は πr^2、
3次元の球の体積は 4/3πr^3。
では、4次元だったら?
現実の空間は3次元までですが、その上の4次元、5次元であっても球
(中心点から一定の半径以内にある点の集まり)を考えることができて、その体積を計算することもできます。
ウィキペディアには「n次元空間の球」の、体積や表面積を計算する式が載っています >> wikipedia:球
式の求め方は他のサイトに譲るとして、
ここでは以下の、ちょっと気になる記述に目を向けてみましょう。

n 次元単位球の体積は n = 5 のとき、表面積は n = 7 のときにそれぞれ最大値をとり、
それ以降は n の増加にともないどちらも急激に減少して 0 に収束する。

球の体積は5次元が一番大きくて、表面積は7次元が一番大きくなる・・・何とも不思議ではありませんか。
このグラフは、半径=1の超球の体積を、20次元まで描いたものです。

確かに5が最大になっていて、その後次元が上がると0に近づいています。
次は表面積のグラフ。

こちらの方は7が最大となっています。
もしこれが、次元が上がるにつれて一方的に減るだけだったなら、まだ納得できるのですが。
5次元と7次元には、何か特別な意味があるのでしょうか?

結論から言いますと、この5と7には、それほど深い意味はありません。
なぜ、たまたま5と7が最大になったのか。
それは、球の半径を共通の基準=1として比較していたからです。
試しに、半径ではなく、直径を共通の基準=1として、体積のグラフを描き直してみましょう。

こうして見ると、体積は次元が上がるにつれて、一方的に減少していることが分かるでしょう。
(あえて言うと0と1の間に最大値があるのですが、それは直線と0次元の間?ということ)
直径=1とした場合の体積には、どういう意味があるのか。
それは、「外枠の箱の中で球が占める割合」ということです。
例えば正方形の中にぴったり納まる円は、正方形の中の約79%を占めています。
立方体の中にぴったり納まる球は、立方体の中の約52%です。
1次元の場合は、線の中にぴったり納まる線は、そのまま100%です。
次元が大きくなって、外枠の箱の角の数が増えれば増えるほど、中の球と外枠の箱の間の隙間は増えてゆくでしょう。

直径基準で考えたときの「超球の体積」には、空間を占める割合という意味があり、
それは次元が上がるにつれて一方的に減少するものだったのです。
計算によると、10次元の場合、外枠の箱に占める球の割合はわずか0.25%、
20次元になると、たったの0.0000025%程度になります。
残りのほとんどは「隙間」になっているようです。

それでは、直径ではなく、半径を基準として次元の異なる球を比較したら?

・・・円と球の場合を想像してみてください。
そこに何か明確な意味があるとは思えません。

表面積についても似たようなことが言えます。
球がぴったり納まる外枠の表面積と、球面との割合をグラフに描くと、こうなります。

やはり次元が上がるにつれて、一方的に減少しています。
ここでもやはり、半径サイズの正方形(または立方体)と、球面の比較には意味がないと考えるべきでしょう。

結局のところ、5次元と7次元が最大となったのは、たまたま「半径」を基準とした公式で比較したからそうなっただけで、
5と7に何か特別な意味があるとは思えません。
私も当初は、きっと何か深い意味があるだろうといろいろ想像してみたのですが・・・
意外につまらない結論でちょっとがっかりでした。
数字の裏に、いつでも深い意味が隠されているとは限らないのです。
今回は「意外につまらない」話でしたが、高次元空間にはもっとおもしろい話もたくさんあります。
たとえば、こんなの。
* 高次元空間の隙間の大きさ
>> http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4d65a6811aa35998e6246bb57025a974