君はエントロピーって言葉を知ってるかい?(2)
「まどか☆マギカでエントロピー」、第2回ができました。
>> http://brownian.motion.ne.jp/mami/2nd/ (要 Flash 10以降)
今回のテーマは「統計力学のエントロピー」。
「まどか☆マギカ」とは、今年4月まで放映していた魔法少女もののアニメのこと。
話の中にエントロピーが登場する、というのが、そもそものきっかけだったのです。
・・・で、内容は Flashの方を見てもらうことにして、
ここでは Flash中で説明し切れなかった「計算はちょっと大変」のところを補足します。
問題:
M円のお金をN人に分ける場合の数をひたすら数え挙げたとき、
最も場合の数が多くなるのは、どんなときか?
この答はよく知られていて、「ボルツマン分布」と呼ばれる形になります。
それでは、なぜ「ボルツマン分布」といった形になるのか?
幾つかの導出方法があります。
1.ラグランジュの未定数法を使って計算する.
・統計力学に挑戦〜 Boltzmann分布〜(.pdf)
>> http://zatsudankagaku.web.fc2.com/seika/091209.pdf
from 雑談化学サークル >> http://zatsudankagaku.web.fc2.com/
・ラグランジュの未定乗数法のイメージ >> [id:rikunora:20110210]
2.図を描いて直感的に理解する.
・指数分布の理由
>> http://brownian.motion.ne.jp/11_WhyPPMisImpossible/08_ReasonForExp.html
3.とにかくパソコンで試してみる.
・100人の村でランダムにお金を交換したら?
>> http://brownian.motion.ne.jp/memo/Binbou.php
今回は、さらに4つ目の説明を付け加えようと思います。
4.組み合わせを考えて => スターリングの公式.
具体的に、A,B,C,Dの4人に、9個の玉が配られた状況を考えます。
・まずAの玉を一番左に一列に並べます。
・次に、AとBの境目がわかるように、1個の青玉を置きます。
・青玉の後に、続けてBの持っている玉を並べます。
・以下、同じようにして、青玉で区切って全員の持っている玉を一列に並べます。
すると・・・玉の配り方というのは、結局のところ
「赤玉+青玉の長さの列の中に、青玉を置く組み合わせの数」
だということに気付きます。
つまり、
組み合わせの数 = (M + N - 1)! / M!(N - 1)!
となります。
次に、スターリングの公式
N! = (N / e )^N
という近似を使って、階乗!を指数に置き換えます。
このとき、- 1 は、M,Nに比べて非常に小さいとして、省略。
置き換えた結果は
組み合わせの数 = (M+N / M)^M・(M+N / N)^N
これで組み合わせの数は
・Mの指数に、ほぼ比例する
・Nの指数に、ほぼ比例する
ということがわかります。
いま、N人の中の1人、仮にAさんがx円持っていたとすると、残りのお金は(M - x)円です。
Aさんがx円持っている組み合わせの数は、
残る(M - x)円を、(N - 1)人に配った組み合わせの数と同じになります。
そこで、Aさんの所持金xを横軸に、組み合わせの数を縦軸にグラフを描いてみると、
それはNに対する指数となり、ボルツマン分布の形になる、というわけです。
※ちなみに、この「玉を一列に並べる」というアイデアは、久保亮五の教科書に載っていたものです。
※上の計算はてきとーにはしょっているので、詳しく知りたい人は教科書を見るか、自力で考えるべし。