三次元の囲碁(2)

前記事、三次元の囲碁[id:rikunora:20091103]の続きです。
三次元の囲碁は、こんな風に進むのだよ、という一例です。
[5x5x5]の碁盤(碁体?)で試してみました。

まず先手の黒番ですが、とにかく隅に地を作ることを目指して、[2x2x2]の点に初手を打ってみます。
2次元の囲碁であれば、[3x3]の点に打てば、隅に地ができると言われています。
今回は3次元なので、もう1路隅に近い点に置きました。これで隅が確保できるのか?

次の白番。隅に黒地を作らせないように邪魔してみます。
手前の壁にくっついた、[1x2x2]の点に打ち込みました。
2次元の碁盤であれば、こんな場所に打ったら逆に黒に囲まれて、つぶされてしまうところです。

黒は白を、手前側の面に押しやることを考えて、[2x3x2]の点に打ちました。
2次元で言えば、辺に押しやる感じです。

白は閉じこめられないように、[1x3x3]の点に打ちました。
2次元であれば、すぐ隣に「のびる」ところですが、3次元であれば、斜めに離しても大丈夫です。
黒がどちらかを切ってきても、もう一方の側をつなぐことができますから。

黒は、とにかく白を手前の面から出さないように押さえます、[2x3x3]。

白は、手前の面から脱出を図るため、1つ奥の面に打ちました、[2x4x3]。
2次元だったら、こんな逃げ方は無理なところですが・・・

黒は、逃げた石とさっきの石を分断しました、[1x4x3]。

白は、分断された石を連絡するように、斜めに石を置きました、[1x4x2]
すると分断した黒石は3方を囲まれることになるので、取られないようにのびておきます、[1x4x4]。
(それでも黒にはあと1方の空きがあるので、ここでのびなくても構わないのですけれど)

黒が下がったおかげで、白には1手つなぐチャンスができました、[2x4x2]。
これで白は、手前側の壁から脱出できたわけです。

今度は黒が分断されないように、[2x3x4]に打って連絡します。
ここまでで、黒白共に、蛇のように絡み合っている一丸ずつの塊になったわけです。
結局のところ、黒が[2x2x2]の点からスタートしたのに、隅を確保することができませんでした。
こうして見ると、3次元で地を確保するのがとても難しいように思えませんか?
もちろん囲碁の進行は千変万化なので、あっと驚くような手筋があるのかもしれませんが・・・

仮に3次元以上の、4次元とか、5次元といった囲碁があったとしたら、
おそらく3次元よりもつまらないものになると思えます。
次元が高いほど石の逃げ出す方向が増えるので、逃げ出すことはますます容易になって、
地を確保することはますます難しくなると予想されるからです。
どうやら囲碁というものは、2次元が一番おもしろくて、1次元だとゲームにならず、
3次元以上であっても、2次元ほどはおもしろいゲームにならないようです。

2次元だけが特異的におもしろい・・・
唐突ですが、このことは「なぜ宇宙は3次元空間なのか」という問いかけのヒントにならないでしょうか。
宇宙は3次元だと「いちばんおもしろくて」、2次元以下でも、4次元以上でも「つまらないものになってしまう」。
もちろん囲碁と宇宙は全くの別物ですが、神様が素粒子碁石で打っているのだとすれば、まあ、そんな感じかなぁと。
なぜ宇宙は3次元空間なのか、いろいろな考えがあるようです。
* なぜ4次元か
>> http://www.edu.kobe-u.ac.jp/fsci-astro/members/matsuda/review/4jigen.html
このページのタイトルは「4次元」となっていますが、これは「3次元空間+1次元の時間=4次元」ということです。
物理の世界では、時間と空間をいっしょくたにして4次元時空として扱うことが、よくあるんですね。
数学的に見ると、4次元というのは非常に特殊な性質を持っているようです。
* 薫日記 -- エキゾチックな4次元
>> http://kaoru.txt-nifty.com/diary/2005/11/post_5421.html
* 4次元の特殊性
>> http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/4jigen.htm
R^4 には無限個の微分構造がある、、、らしい。
ゲームのおもしろさ=振る舞いの複雑さが、空間の次元数に依存しているということ自体が、
とてもおもしろいことのように思えます。