シェルピンスキー三角形の面積

シェルピンスキーの三角形、という不思議な図形があります。
三角形の中に3つの三角形をあてはめて、その中の三角形の中にまた三角形をあてはめて、
その中の三角形の中にまた三角形をあてはめて、その中の三角形の中にまた三角形をあてはめて、、、
を、どこまでも繰り返したフラクタル図形です。 wikipedia:シェルピンスキーのギャスケット
その立体版の画像が、こちらのブログのトップを飾っています。不思議な絵です。
* fkのページ >> http://blogs.yahoo.co.jp/kawasakif1985/
このシェルピンスキー三角形の面積(立体版では体積)は、0になると考えられています。
なぜ0になるのか?
そのことに納得がいかず、以前こんな記事を書きました。
* 円で隙間を埋め尽くす >> [id:rikunora:20081129]
ところが、この以前書いた記事に抜けているところがあったので、今回そのフォローをします。

正三角形ではなく、下の図のような直角二等辺三角形で考えます。

面積が0だということを示すには、シェルピンスキー三角形に属している点がほとんど無い、ということです。
そこで、図の中から任意の1点をとってきたとき、その点がどの三角形に含まれているのかをつきとめてみましょう。
図にある正方形内部の点を2進数で表すことを考えます。
正方形の幅と高さを、2進数で 1だとしましょう。
点の座標を2進数で表したとき、
・X軸の小数点1桁目が 1の点は 右半分にきて、0の点は左半分にきます。
・Y軸の小数点1桁目が 1の点は 上半分にきて、0の点は下半分にきます。
つまりこんな感じに、正方形は4つの領域に分かれます。

上の図で言う(A)の領域は、シェルピンスキーの三角形の外にあります。
2進数で言うと(X,Y) = (1,1)ということです。
このことから、2進数で表された点の座標を上位の桁から順番に見ていって、
どこかに(1,1)という組があれば、その点はシェルピンスキーの三角形の外にくることがわかります。
例えば、
 X=0.011
 Y=0.101
という点は、小数点3桁目が(1,1)の組になっていますから、3番目の大きさの三角形のところで外れているわけです。

次に、(1,1)の組が出現せずに、有限長で終わっている点について考えてみます。
例えば
 X=0.010101
 Y=0.101010
といった点です。
このような点は、ちょうど「境界線上」にある点です。
これは「線」なので、どんなに集めてきても面積は0です。
ポイントは、桁数が有限長だというところです。(まあ直観的に納得してください)

最後に問題になるのは、どこまでいっても(1,1)の組が出現しないような点、
 X=0.010101010101010101・・・
 Y=0.101010101010101010・・・
のような点がどうなっているかということです。(桁数は無限長)
ここで私は、この点を「ほんの少しだけ動かしてみたらどうなるだろう」ということを考えました。
点の座標のどこでもいいから0と1を書き換えて、もし結果が (1,1) に変われば、
その点はシェルピンスキーの三角形からはみ出すことになるでしょう。
点を「ほんのちょっぴりでも動かすと」はみ出してしまう、だから面積は0なのだ・・・
・・・以前の記事[id:rikunora:20081129]でそう書いたのですが、これは正しくありません。
(1,0) の書き換えには (1,0) -> (0,0) といった、結果が (1,1) の組にならない場合もあるからです。

そこで、数字を書き換えたときに、点がどこに移動するのかをもう少し考え直してみました。
(1,0) -> (0,0) という書き換えは、図で言えば領域(C)から領域(D)への移動になります。
図をみるとわかるように、領域(C)の内部と領域(D)の内部は、全く同じです。
(1,0) -> (0,0) という書き換えを行ったとしても、図形的な意味は全く変わらない。
ということは、書き換えた後の点の性質は、書き換える以前の点にもそっくりあてはまるはずです。
そこで、(1,0) -> (0,0) という書き換え、(0,1) -> (0,0) という書き換えを、片っ端から行ってみることにしましょう。
すると、最後に残るのは、
 X=0.0000・・・無限に続く・・・1
 Y=0.0000・・・無限に続く・・・0
あるいは
 X=0.0000・・・無限に続く・・・0
 Y=0.0000・・・無限に続く・・・1
2点に帰着できるでしょう。
この最後の最後に残った点の近くに、どんなに小さくても良いから「面積」を有することができるでしょうか。
・最後に残った点を含む小さな正方形を、シェルピンスキー三角形の内部に描けるか?
できないですね。
なぜなら、小さな正方形が少しでも面積を有した時点で、正方形の右上の角が(1,1)になってしまいますから。


どれほど小さな、幅εの正方形を用意したとしても、さらにその内部に
 X=0.0000・・・充分な桁数δ・・・1
 Y=0.0000・・・充分な桁数δ・・・1
という点を作ることができる。
なので、小さな正方形を描くことはできなくて、
最後に残った点の近傍に「面積」を有することができなくて、
最後の点がダメだったら、書き換えた他の点も全て右にならえで、
結局「面積」を有することができない、、、というわけです。
・・・ちょっと苦しい説明ですが。
つまるところ、面積が0だと言いきるためには、どこかで
 0.0000・・・無限に続く・・・1 => 0
という極限操作を認めなければならない、ということです。

関係ありそうな記述をネット上から拾ってきました。
* フラクタル図形とフラクタル次元とは
>> http://www.shizuoka.ac.jp/~math/math/contents/kiroku/Guide/fractdim.pdf

どの部分でも中身がスカスカとは,精確には次のことである:
・シェルピンスキー・ガスケット内部の点Pを勝手(任意)に1つとろう.
・このとき,点Pのどんな近くにも,シェルピンスキー・ガスケットに含まれない点があるということ.
・言い換えると,点P を中心とする円板をどんなに小さくとってきても,
 シェルピンスキー・ガスケットの内部に円板全部を含めることが出来ないということ.

* 「フラクタル入門」
>> http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~komaba/ssh/library/126.htm

最初の正三角形の面積を1であるとする.
すると,最初に正三角形を4等分して,真ん中の1個を除いてできた図形の面積は,3/4である
その次の段階では,それぞれの正三角形の面積が更に3/4倍されるから,出来る図形の面積は(3/4)^2である
これをn回繰り返すと,面積は(3/4)^nである.3 /4が1より小さいことから,
この操作を無限回行って出来たシェルピンスキー・ガスケットの面積は0になることがわかる.

lim[n→∞] (3/4)^n = 0 なんだ、そういうことか。