サイコロ回転体

Q.立方体を対角線を軸にして回転したら、どんな形になるでしょう?

ちょっと考えると、六角形かな? そろばん玉が2つくっついた形かな?
などと思えるのですが、もっと意外な形をしているんです。
答はこんなの。

上下が円錐で、真ん中が「つづみ型」の曲面となった形なのです。
直線を回転させたのに、曲面ができるとことろが不思議です。

一辺の長さが1の立方体の図をにらみつつ、ピタゴラスの定理を駆使すれば、およその寸法の想像がつきます。

回転した形の、上下が円錐なのは容易に想像できるのですが、問題なのは真ん中の部分です。
真ん中の形とは、ようするに斜めになった棒をグルッと一回転させたときに、どういった跡を描くか、という問題です。
そこで、改めて斜めになった棒だけを取り出してみると、こんな風になるでしょう。

簡単のため、上の図では XYZの三次元座標で、点(1,0,0)から点(0,1,1)の間に棒を置いてみました。
(単に斜めに棒を置いてみた、ということです。立方体の一辺の数値とは一致していません。)
この棒の直線を、媒介変数tを用いて式で表すと、
 X = -t + 1
 Y = t
 Z = t
となります。
Z軸から棒までの距離をLとして、このLをZの式として表すことを考えます。
Xと Yを、それぞれ Z で表してみると、
 X = -Z + 1
 Y = Z
一方
 L = √(X^2 + Y^2)
ですから、結局
 L = √((-Z + 1)^2 + Z^2)
  = √(Z^2 - 2Z + 1 + Z^2)
  = √(2 Z^2 - 2Z + 1)
つまり、棒までの距離 L は、二次式にルートが付いたような形になっています。
二乗してルートを付けたってあたりが、いかにも直線から作られたって感じですよね。
これをグラフに書いてみると、こんな風になります。

たしかに曲線になっているでしょ。
上の式の両辺を二乗してまとめると
 L^2 = 2 (Z - 1/2)^2 + 1/2
となるから、これって双曲線ですね。
グラフの目盛りは、縦方向に拡大してあります。
なので、立方体を回転させたときのへこみ具合はもっとゆるやかな感じになってます。

この曲面は「すだれをねじった形」とでも言えばよいのでしょうか。
双曲線を回してできた形なので、一葉双曲面というモノモノしい名前が付いています。
この一葉双曲面、もともと直線を並べて作った面なので「線織面」と呼ばれるものの1つです。
線織面には、一葉双曲面の他に、円柱や円錐といった形、双曲放物面などがあります。
「線織面」というキーワードでネット検索すると、美しいデザインの曲面がいろいろとヒットします。
>> http://www.f.waseda.jp/takezawa/math/geometry/surface2.htm
かっこよく言えば、ガウス曲率がゼロってことです。 失礼、これ間違い!
一葉双曲面はガウス曲率が負になります。
一口に直線から作られているといっても、円柱や円錐は平面に展開できるのに対し、一葉双曲面は平面に開くことができません。
なので、一葉双曲面は「まっすぐなのに曲がっている」不思議な曲面なのです。

* ここに載っていました。
>> 代数曲線の接線,代数曲面の接平面(その1)
  【5】代数曲面の分類 の項目を参照.


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で、いつものようにWEBで検索してみたら、これって大学の入試問題になってました。
* 東京工大93年の問題(PDFファイル)
>> 立方体の回転・体積
大学入試ってすごいなー。
これ、制限時間内に答えるのって、かなりハイレベルじゃない?