宇宙・肉体・悪魔(1)

人類の宇宙進出というアイデアを、最初に大胆に提唱したのは誰でしょうか。
いろんな人物を挙げることができるでしょうが、その中に、イギリスの物理学者 J・D・バナールが入ります。
バナールは、1929年、27才の時に「宇宙・肉体・悪魔 理性的精神の敵について」という本を書きました。
この本には、スペースコロニーや、人間の改造など、極端に進んだ -- というよりもぶっとんだ未来が描かれています。
SFの原典とも言えます。
日本語訳も出ていたらしいのですが、残念ながら現在廃版になっていて、入手できません。
 >> 復刊ドットコム、宇宙・肉体・悪魔
代わりに、以下で原文を見ることができます。
 The World, the Flesh & the Devil (JD Bernal, 1929)
しかたなく、辞書を片手に、第一章と、第二章を訳してみました。
 >> I The Future -- 未来 --
 >> II The World -- 世界 --
第一章 The Future は事実上のはしがきです。
第二章 The World には、太陽帆船やスペースコロニーの話が書かれており、文句なくおもしろい!
ちょっと引用してみましょう。

On earth, even if we should use all the solar energy which we received,
地球では、たとえもし我々が受け取る太陽エネルギーの全てを使ったとしても、
we should still be wasting all but one two-billionths of the energy that the sun gives out.
我々はなお無駄にしている、太陽が放出する全エネルギーの20億分の1以外を。


When the technicalities of space navigation are fully understood there will,
宇宙航行の諸技術が完全に理解されたとき、
from desire or necessity, come the idea of building a permanent home for men in space.
願望あるいは必要から、人の永住の地を宇宙に建設しようというアイデアが浮かぶ。


Imagine a spherical shell ten miles or so in diameter, made of the lightest materials and mostly hollow;
10マイル(16km)程度の球形の殻を想像せよ、最も軽く、ほとんど空洞の物質でできている;
for this purpose the new molecular materials would be admirably suited.
この目的のため新たな分子素材がふさわしいだろう。

つたない直訳ですまん。(誤訳があったら教えてくだされ。)

私がこの「宇宙・肉体・悪魔」を知ったのは、「正負のユートピア (21世紀問題群ブックス)」という本の中で紹介されていたからです。
この「正負のユートピア」、これはこれでとってもおもしろい。
おもしろくて何度も読んだので、私の発想のかなりの部分は、この本によって培われました。
著者の松田卓也先生のサイトで、草稿を見ることができます。
 >> 正負のユートピア

ところで、このブログのタイトルは「悪魔の妄想」となっているのですが、実はこれ「宇宙・肉体・悪魔」からとってきたのです。
もう1つの理由は、「マックスウェルの悪魔」が好きだったことですね。
タイトルに冠していながら原文を一度も読んだことが無いってのはどうよ、ってことで、ぼちぼち訳を始めたわけです。
残りの章はいつになるか不明、気が向いたら進めるかも。


ちなみに、このブログに「悪魔」で検索して来る人はほとんどいないみたいですね。
ブログのタイトルなんて、何だっていいんですね。