悩めるみんなの統計学入門

突然ですが、統計学の本を出すことになりました。

悩めるみんなの統計学入門 - 統計学で必ず押さえたい6つのキーワード

悩めるみんなの統計学入門 - 統計学で必ず押さえたい6つのキーワード

技術評論社より、11/19発売予定です。どうぞよろしく!
>> http://gihyo.jp/book/pickup/2010/0083  ※リンク先、なぜかときどき見えないことがあります・・・

目標は「いちばんやさしい統計の本」。
サブタイトルに「統計学で必ず押さえたい6つのキーワード」と付いています。
6つのキーワードと、各章のタイトルは次の通り。

 第1章 普通って、どういうのが普通? - 分布
 第2章 先生、それって、えこひいき? - 分散
 第3章 人気ブログの秘密はどこに?  - 相関
 第4章 私はほんとにテレビの見過ぎ? - 標本
 第5章 血液型占いってホントに当たる? - カイ2乗検定
 第6章 彼氏ができるとメールが増える? - t検定

この本は、私にとって初めて作った本になります。
なので、とても思い入れがあって、言いたいことがたくさんあります。
そもそも本を作る、ということ自体が新鮮な体験だったので、
「なるほど、こうやって作るのか!」と納得したことも多々ありました。
それをいちいち書いていると切りがないので、今、これぞと思うことだけをピックアップします。


盛り込むことより削ることに苦労した

本一冊の分量は、読む側から見ると長いように見えるが、書く側から見ると、とても短い。
これはやってみて初めて実感できたことです。
作る側としては分量を2倍に引き延ばす方が、コンパクトに半分にまとめるよりずっと楽なのです。
「編集とは、削ることと見つけたり」で、かなり容赦なく削り(削られ)ました。
やさしい本という性格上、どうしても直観的であいまいな部分が出てきます。
そういうところは、保身のためについつい言い訳したくなります。
すると、言い訳がダラダラと続く、とっても眠たい解説本ができあがります。
あと、権威ある大家の孫引きや、数式を書いてしまった方が、作り手としては無難です。
 「直観的に、正確に、短く。」
この3つが全く相反する要素だということが、いざ作ってみて、本当によくわかりました。
本当は、作者としてはもう少し盛り込みたいところなのですが、
読む側からすると、この位がちょうど良いのかもしれません。


本を作るには、時間と労力がかかる

どのくらい時間がかかったかと言うと、最初にお話をいただいてから、足かけ1年半くらいです。
初期の原稿は、丸1冊分とは言いませんが、半分くらいボツです。
どこがどうボツになったのか! という点こそが真のノウハウなのですが、、、
残念ながら、それは企業秘密です(笑)
というより、今見直すと、ボツ原稿、ちょっと恥ずかしいゾ。


編集が付くと、違う!

いわゆる市販の本と、個人・同人出版の最大の違いは、編集者が付くことだと思いました。
ネットが発達した今日では、WEBでも電子出版でも、その気になれば文章を発表する場はいくらでもあると思います。
(売れるかどうかは別として)
一億総作家とまで言われる今日、既存の出版形態の価値はどこにあるのか?
それはずばり、編集が付くことです。
編集が付くと、何が違うのか。

・大きな方向性が間違わなくなる。
単純に考えて、たった1人の意見と、複数の意見とでは、見渡せる範囲の広さが違います。
違う角度から見た客観的な意見が聞けるというのは、大きい。
やはり複数人で作ったものには、とんでもない大ハズレの危険性が小さくなります。
(これは統計的にも言えることだった。)
これが文芸作品ならどうかわかりませんが、技術解説本の類であれば、
基本的に複数の意見を交えることはプラスになります。

・校正力が違う。
私一人では見逃していただろうと思えるミスが校正段階で見つかりました。
校正とは、ソフトウェアで言えばシステムテストのようなものです。
テストはできれば、作った人とは別の人が行った方が良い。
お金をもらっている本と、フリーでブログに書いているような、ある意味無責任な文章との違いは、
結局校正を行ったかどうかの違いなのです。


美少女の出現頻度には限界がある?!

この本には、何と美少女が登場します!
いや、どこにも「美」とは書いてないのですが、表紙を見れば明らかかと・・・
せっかくなので「もっと美少女をたくさん出しましょう!」と、強く訴えかけたかどうか定かではありませんが、
とにかくその案はボツになりました。
読者が期待しているのは、わかりやすい統計の解説であって、決して美少女の学園生活ではないからです(のはず)。
このような常識的な判断も、編集が付いて初めて可能になることだったのですねー。

一応誤解なきように言いますと、表紙&イラストは人気イラストレーターの加藤アカツキさんにお願いしました。
(私が描いたものではありません。)
これが本当にイメージ通り、いや、イメージ以上の出来映えで、私はとっても気に入っています!


第3章 人気ブログの秘密はどこに? は、ちょっとだけ事実に基づいている。

はい、今、正に見ている、このブログのデータが元になっています。
本に記載されている例題データは適当にいじっていますが、まんざらでたらめというわけでもありません。
この本が形になるまでの間、ブログとホームページはとても大きな役割を果たしてきました。
私は、いわゆる先生と呼ばれる偉い人ではないし、これまで本作りというものにも無縁でした。
そういう「普通の人」がここまで来れたのは、間違いなくネットとブログとホームページの力です。
改めてネットの可能性というものを感じます。
実は、このブログを見ている読者の皆さんがいたからこそ、今回本の形にたどり着くことができたのです。
この場を借りて感謝します、どうもありがとう!