人間に薬品はどれだけ必要か(1)

現代人は薬品なしには生きてゆけません。
家の中を見回してみてください。
台所も、洗面台も、風呂場も、たくさんの薬品であふれかえっていることでしょう。
もし農薬というものが無かったら、恐らく日本人の大半は飢え死にしていたはずです。
その一方で、できれば無農薬野菜を食べたい、薬品のお世話にはなりたくない、というのも現代人の贅沢な悩みです。
「薬品などというものは、本来人間には全く必要の無いものだ」といった、極端な主張をする人もいます。
実のところ、人間にとって薬品はどれだけ必要なのでしょうか。
この大きな問い掛けに、私自身の身近な体験からヒントを出したいと思います。
今回取り上げる薬品は、
 1.シャンプー
 2.ハミガキ粉
 3.目薬
の3つです。


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1.シャンプー
私がシャンプーというものを使わなくなったきっかけは、このサイトにありました。
* 新しい創薬治療 -- では,洗髪はどうしたらいいのか?
>> http://www.wound-treatment.jp/next/wound377.htm
>> http://www.wound-treatment.jp/

【シャンプーを使わずに温水のみの洗髪にして何が変わったか】
* 頭皮の痒みが全くなくなった。
* 抜け毛が劇的に減少した。
* フケがほとん出なくなった。
* 当初「「脂で髪がベタベタするのでは?」と心配したが,毛髪が自然な感じにサラサラになり,杞憂だった。

夏井睦先生というお医者さんのサイトからの引用です。「消毒をしない湿潤治療」で有名です。
以前、私は半信半疑で「消毒をしない湿潤治療」を試したのですが、確かに効果があったのに驚きました。
それ以来、湿潤治療を人に勧めることにしています。>> [id:rikunora:20100209]

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)

この「傷はぜったい消毒するな」という本には、傷以外の皮膚に関することについても書かれています。
そこで取り上げられていたのは、シャンプー、石けん、化粧品はできる限り使うな、とのことでした。
詳しい解説は上の本やサイトを見てください。
要は、こういった薬品によって皮膚の生態系が破壊されてしまう、ということなのです。
確かに傷の治療は効果があったので、次に私は「シャンプーを使わない」を実践に移すことにしました。
「髪の毛はシャンプーを使わずに、お湯で洗う。」
前回の記事が2/9ですから、それから約半年間、シャンプーを使わなかったことになります。
その結果、どうなったか。
■メリット
 M1.フケが出なくなった。
 M2.抜け毛も少なくなった。
 M3.頭皮が「赤」から「白」に変わった。
 M4.当然、シャンプーが不要になった。
■デメリット
 D1.髪の毛が跳ねるようになってきた。
 D2.残念ながら、髪の毛がフサフサ生えてくる、といった結果にはならなかった。
はっきり言って、ほとんど良いことずくめでした。
(こいつは湿潤教信者か、くだんの医者の友達なのではないか、と勘ぐられるかもしれませんが、
 別に私は何ももらっていませんよ(笑)。疑うのであれば試しにやってみよう。)

M1.フケが出なくなった。
これは家族から指摘されました。
私が家族にシャンプーを止めたことを伝える以前に指摘されたので、客観的な事実であろうと思います。
シャンプーについては、実は以前から1つの疑問を抱いていました。
それは、「よくシャンプーで洗った翌日ほど、なぜかフケが出る」という事実です。
常識からすれば、逆のはずだとは思いませんか。
この疑問は、お湯洗いすることによって始めて解消しました。
フケとは、要するに上皮の死骸です。
シャンプーは上皮を薄く殺しています。
その死骸が、翌日になって大量に出る、という単純なメカニズムだったのです。
大量のフケは、シャンプー以外の理由によっても出ることがあります。
例えば、帽子なしで炎天下に長時間いると、頭皮が日焼けして大量のフケが出ます。
これは紫外線によって上皮が死んでしまったからです。
つまり、上皮をできるだけ殺さないようにすれば、フケはそれほど目立たない。
考えてみれば当たり前の話だったのです。

M2.抜け毛も少なくなった。
体感的なものです。
数えたわけではありませんが、洗ったときに落ちる抜け毛が見た目にも減りました。

M3.頭皮が「赤」から「白」に変わった。
実はこれが、シャンプーを止めてから最も劇的に変わったことです。
シャンプーを止めて3日くらいで、最初に表れたのがこの頭皮の変化でした。
実は私、かなり髪の毛が薄くて地肌の様子が見て取れます。
(なので、写真掲載は勘弁してください。
 なぜ薄いのかという理由は、以下を続けて読めばわかります。)
以前までは、地肌はほんのり赤いのが普通だと思っていました。
ところがそれは間違っていて、「地肌が赤い」ということは実は危険サインだったのです。
シャンプーを止めてからは、他の皮膚と同じ色になりました。

M4.当然、シャンプーが不要になった。
補足しますと、半年間の間全くシャンプーゼロだったわけではありません。
汚れのひどいときや、旅行に出かけたときなどは、構わずシャンプーを使いました。
その場合も、地肌をゴシゴシ擦るのは止めにして、表面にある髪の毛だけを洗うように心がけました。

D1.髪の毛が跳ねるようになってきた。
これもシャンプーを止めてから、すぐに現れた変化です。
以前は髪の毛が「ぺったり」していました。
それがシャンプーを止めたとたん、「跳ねる」ようになってきたのです。
髪の毛が跳ねると、朝、揃えるために時間を割かないといけません。
それゆえデメリットの方に入れたのですが、医学的にはデメリットではないのかもしれません。

D2.残念ながら、髪の毛がフサフサ生えてくる、といった結果にはならなかった。
これは期待のしすぎ(?!)。
もともと薄かった髪の毛が回復するほどの効果は(いまのところ)ありませんでした。
もっとも私の場合、逆にシャンプーを止めたらツルッパケになるかも、という恐れもあったわけで。
少なくとも悪い方には作用しませんでした。

シャンプーの不要をうたっているのは、何もここだけではありません。
「シャンプー 使わない」で検索すると、たくさんのページがヒットします。
* 分裂勘違い君劇場 -- シャンプーとリンスと石鹸は使わない方がいい
>> http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070202/1170403306
* せっけん、シャンプー使わないほうがいいんだよ教
>> http://blogs.yahoo.co.jp/hamachamaxx/46293657.html
* 洗剤を使わない洗髪について
>> http://www.wakiga.jpn.org/oldlog2/lg0384.html
* 手作り生活 -- その1 石鹸、シャンプーの話
>> http://www.onjix.com/paddle/te/te01.html
良い話ばかりでは一方的なので、たいして変わらなかったよ、という報告も挙げておきます。
* 「シャンプーとリンスと石鹸は使わない方がいい」を1年間実践してみた結果報告
>> http://syoujikisumankatta.blog36.fc2.com/blog-entry-360.html

さて、ここで話を打ち切れば「シャンプーは使わない方が良い」でおしまいなのですが、
実のところシャンプーの可否はそれほど簡単ではないと思っています。
というのは、やはり人によって、特に油っ気の多い若い人には、シャンプーはある程度必要なのではないかと思うからです。
次に、「いかにして私の髪の毛は薄くなったか」を含めて、シャンプーは必要かもしれないという話をします。

今を遡ること10数年前、私はとある地方都市に住んでいて、ちょっとこだわりのあるおもしろい床屋に通っていました。
その床屋の主人がたいへん研究熱心で、行く度に髪の毛の仕組みについて、いろいろと話てくれました。
以下、記憶を頼りに床屋の話をまとめます。
まず床屋の主人が開口一番に言うには、「極意はシャンプーにある」のだそうです。
そして、床屋が「これに気付くのに、10年かかりましたよ」とのことでした。
シャンプーの何が大事なのか。
その床屋によると、
 ・健康を保つべきは頭皮であり、頭皮のマッサージが最も重要である。
 ・髪の健康を損なう最大の理由は、油と汚れが固まったものが毛根を塞ぐからである。
 ・毛根の汚れを取り除き、常に新鮮な油の分泌を保つのが、髪の健康には欠かせない。
 ・そのために、シャンプーと、正しい洗い方を行う必要がある。
 ・指の腹で長時間マッサージすべし。爪を立ててガリガリ洗ってはいけない。
ということでした。
で、シャンプーについて。
 ・良いシャンプーを使え。安物の合成系シャンプーは使うな。
 ・シャンプーは油で決まる。合成系 < 植物系 < 動物系 の順に良くなる。
 ・最悪なのは「トニック系」、スーッする刺激剤が入ったものだが、これは絶対使うな。
 ・しかしながら、良いシャンプーは痛みやすい(酸化する)。
 ・床屋では粉末の薬用シャンプーを購入し、朝、使うだけの量をお湯に溶かした後、冷蔵庫に入れておく。
 ・床屋のシャンプーは、リンスと一体化している。
  シャンプーとリンスを分けて売っているのは、メーカーのぼったくりである。

中でも印象に残ったのは「最上級のシャンプーは人の油から作る」という話でした。
この話がどこまで信憑性があるのか、今となっては確かめようもないし、半分冗談だったのかもしれません。
とにかく床屋が言うには、人の髪に理想的なシャンプーは、
やはり人の髪から採った油によって作られるとのことでした。
どのようにして、人の髪の油を大量に集めるのか。
実は、世界には大量に人の髪の毛が余っている場所があるのです。
それは、中国やインドの僧院で行われる断髪式です。
僧院では、定期的に行われる断髪式で大量の髪の毛が余ります。
余った髪の毛は捨てるか、燃やすか、処分に困るものなのですが、
これに着目した「とある日本の食品会社」がありました。
髪の毛は貴重なアミノ酸資源なのだと・・・そう考えるとちょっと恐いのですが、
とにかく「とある日本の食品会社」は、大量の髪の毛を二束三文で仕入れることに成功しました。
そして、貴重なアミノ酸を「何か」に使った後、余ったのは大量の髪の毛の油でした。
ここでさらに、その余った髪の毛の油に着目した薬品メーカーがあって、
捨てるはずだった油を二束三文で仕入れてきて、理想的なシャンプーを作り上げたのだそうな。
「それが、うちで使っているシャンプーなんですよ。」
と床屋はうそぶいていました。
かなり眉唾な話なのですが、、、とにかくその位、シャンプーにはこだわりがあったということなのです。

さて、この床屋が私の髪の毛を見て言うには、
「お客さん、10年後には髪の毛が薄くなるよ」とのことでした。
(この予言は10年後、見事に的中することになります。)
そして「できれば今から、よくマッサージしながらシャンプーするのが良い」と教わりました。
しかし、長時間マッサージしつつ頭を洗うのは手間がかかります。
すると、床屋は1つの秘策を授けてくれました。
それは「漬け洗い」です。
「もし洗うのが面倒だったら、まずシャンプーしてから、すぐに濯がずに10分くらい放置すればいいんです。
例えば湯船につかる前にシャンプーして、お風呂に10分浸かった後で洗い流す。
これなら手間もかからず、汚れはきれいさっぱり落ちますよ。
ついでに言えば、シャンプーとリンスは最初から1つに混ぜておいた方が良いです。」
さっそく私はこの「漬け洗い法」で頭を洗ったところ、確かに、とっても良く汚れが落ちました。
油がきれいさっぱり無くなった感じです。
それ以来10年間、私は「漬け洗い法」を続けてきました・・・

程度の差こそあれ、床屋でシャンプーを勧める理由は「毛穴に詰まった油汚れを取り除く」ことにあると思います。
そして、以上の床屋の理屈が100%完全に間違い、というのもちょっと考え難い気がします。
しかし、シャンプーせよ、というのと、シャンプーするな、というのは正反対の主張です。
一体どちらが間違っているのか。
1つ納得のいく答は、「10年間の間に、私の体質が変化した」ということでしょうか。
若いときの皮膚は油っこいし、頭皮の油もたくさん分泌されます。ニキビ顔のようなものです。
そういう皮膚に対して「石鹸でよく洗いなさい」というのは、おそらく正しい対処法でしょう。
しかし、ニキビ顔はいつまでも続くわけではありません。
年をとって油の分泌が少なくなってきたときに、従来と同じ徹底的な洗い方を続けたら、どうなるか。
不幸にして、それを実践したのが私でした。
「漬け洗い法」というのは、実はとっても強力な洗い方です。(一度試してみればわかります)
若い頃にはそれで良かったのでしょうが、私の場合、その後住む所が変わって、肉体と環境が変化しても、
全く同じ洗い方を続けていました。
多分、それが合っていなかったのでしょう。
そう考えると、床屋が「シャンプーは人の体質によって使い分ける」と言った意味が、今頃になってわかってきました。
シャンプーをするか否かは、人によって、汚れの程度や油の分泌量によって変わってくるのだと思います。
概して、若い、油の分泌量の多い人はシャンプーを使う。
歳をとって、油の分泌量が少なくなってきたら、シャンプーは止める。
これが正しい姿なのではないでしょうか。

ちなみに、私の体験からすると、髪の毛に一番悪いのはストレスです。
私の場合、その後の10年の間にひどく心労の祟った時期があって、どんどん髪の毛が抜け落ちて行きました。
髪の毛が薄い人は、苦労しているのです。
しかし、現代人にとってストレスを減らすことは、薬品を減らすことよりも難しい。
今の私にできるアドバイスは、「自分の体質を見て、適度にシャンプーを減らそう」ということです。
多分、一定年齢以上の普通の大人であれば、シャンプー無しのお湯洗いで問題無いかと思います。
私が試したところ、
 M3.頭皮が「赤」から「白」に変わった。
 D1.髪の毛が跳ねるようになってきた。
の2点は、ほんの1週間、シャンプー無しに切り替えただけでも体感できます。
いきなりシャンプー無しがきつい(変化が大きい)のであれば、2〜3日に1回、
といった具合に少しずつ減らしていって様子を見るのもありでしょう。
もっとも、健康に一番良いのはストレスを減らすことなのですけれどね。

※ 次回、(2)ハミガキ粉 >> [id:rikunora:20100716] に続く。