Sin写像のカオス

※ この記事は、『Sin( Sin( Sin( ・・・ Sin(x))))... のように、Sinをどこまでも繰り返したら、どうなるか? 』
>> [id:rikunora:20170301] の続きです。

単純に Sin Sin Sin ... を繰り返せば0に収束するのですが、
これが a Sin ( a Sin ( a Sin ... であったなら、係数 a によって様相が変わります。
a = π/2 であれば矩形波となり、もっと a が大きくなればカオスになることが予想されます。
そう考えると、これがいわゆる「ロジスティック写像のカオス」にそっくりであったことに気付きました。

 ・ロジスティック写像
   Xn+1 = a Xn・( 1 - Xn )
 ・Sin写像
   Xn+1 = a Sin( Xn )

要は、2次式を Sin に変えただけです。
ロジスティック写像によるカオスは有名ですが、Sin写像によるカオスはあまり目にしません。
調べてみると、Wikipediaに次の記述がありました。

-- wikipedia:ロジスティック写像 より
他の例としては、正弦波を用いた xn+1 = a sin xn という写像でもこの条件を満たし、
周期倍分岐、カオス、窓など、ロジスティック写像同様な振る舞いを見せる。

また、分岐の様子を確認されている方もいます。
* Maximaでつづる数学の旅: カオスのグラフ
>> http://d.hatena.ne.jp/jurupapa/20110615/1308154897

さっそくここでも試してみました。
以下は、a = 0.5 〜 7 まで、0.5刻みで変化させたときの、Sin写像の様子です。



次に、カオスが増大する様子を見るべく、横軸に係数 a、縦軸に収束先をプロットしました。
ロジスティック写像で「分岐図」と呼んでいるグラフです。
(正確な収束先ではなく、1000回写した先のプロットです)

なるほど、ロジスティック写像の分岐図と似ていますが、
 ・上下対称に、直線的に広がっていること、
 ・一定間隔でしましま(?)が見られること、
などが特徴です。

同じ図を、a = 1.75〜2.25 の範囲で拡大したものです。

おもしろいのは、図の中にそこはかとなくSinカーブが潜んでいることです。
Sinの中に Sinが入り込み、フラクタルを成しています。
きっと Sinを畳み掛けたらこうなるだろうと、感覚的にも納得できます。

以上は、次のURLで行っていたことを、そのままSinに当てはめた結果でした。
* ロジスティック写像Mathematica によるシミュレーション)
http://www.qmss.jp/qmss/text/simulation/logistic-map/mathematica/mathematica.htm

ロジスティック写像にはもともと「生物の個体数の変動」といった意味がありました。
昆虫を一定サイズの容器内で飼ったとき、個体が少数でまだゆとりがあるうちはどんどん増えますが、
数が増え、飽和状態に近付くにつれてだんだん住みにくくなり、増加率が下がってくる。
これをモデル化したものが、ロジスティック写像です。

それでは Sin写像の繰り返しにも、何か実在の意味があるのでしょうか。
改めて人間社会を見渡せば、必ずしもロジスティックに当てはまらない増え方もあるのではないかと思えます。
ブームや流行の波が一定周期でやってくる社会では、波に乗った者が勝ち、
乗り遅れた者、あるいは早すぎた者たちは負けるといった運命にあります。
好評な株には我れ先にと群がり、大多数が群がる頃には他人の逆を張る。
一人一人が他人と同じになるまいと行動した結果、自ずと潮の満ち引きのような周期が形作られる。
そうした流行の波が次々と畳み掛けるようにやってくる社会とは、
大局的に見れば Sin写像の繰り返しではないでしょうか。
そこで係数 a を上げる操作とは、「社会のサイクルをより早く回すこと」に相当するでしょう。
かつて手紙だったものが、電信、電話となり、インターネットとなって、何倍ものサイクルで回るようになる。
その結果、どうなるか。
カオスとなります。
かつて、ゆっくり大きく行われていた1パターンが、サイクルが早回しになるにつれ、
小さく入れ子になって折り重なり、カオスを形成する。
確かに「歴史は繰り返す」のですが、決して以前と同じではなく、
以前よりスケールダウンした小さなパターンが、細かく、至る所で、何度も何度も繰り返される。
その極限が、ひたすら“流行の波”を突き詰めた未来の姿であるように思えるのです。