選択肢テストの正しい評価

○×式の選択肢テストで0点を採った生徒がいたとしたら、
その生徒は本当に何も分かっていないのか・・・
たぶん、そんなことはありません。
全くのでたらめに○×を付ければ、半分くらいは偶然当たってしまうからです。
○×2択のテストで0点を採るのは、100点を採るのと同じくらい難しい。
つまり、○×テストでは50点が0点(?!)なのです。
ググってみたら、こんな記事があった。
* 入試問題全問の正解がわかっていたが、抗議のために敢えて0点を取ったと主張している若者
>> http://rate.livedoor.biz/archives/50255550.html

偶然当たることを考えに入れれば、○×テストの評価はこんな風になるでしょう。
  50点 = 理解度  0%
  60点 = 理解度 20%
  70点 = 理解度 40%
  80点 = 理解度 60%
  90点 = 理解度 80%
 100点 = 理解度100%
○×テストの80点は、記述式テストの60点に相当する。
これって「選択肢問題は易しい」という感覚にだいたい合っていると思う。

しかし、この数え方からすると
  40点 = 理解度 20% ?!
となり、50点の人より40点の方が上だということになってしまいます。
やはりこれは不自然に思える。
だいたい40点といった微妙な点数は、狙ったというより、たまたまそうなった可能性の方が高いでしょう。
それでは、どの辺までがたまたま偶然で、どこから先が狙わないと取れない点数なのか。

このグラフは、2択の○×問題が10題あったとき、取れる点数の確率を示したものです。
・青いグラフは理解度0%=全くの偶然、
・赤いグラフは理解度50%=5題は初めから正解で、残る5題が偶然に左右される、
としています。
まず青いグラフの方に着目して、点数が偶然40点以下になる確率を見積もると 37.7%、
これならたまたま起こったとしても不思議ではありません。
※ グラフはExcelの二項分布(BINOMDIST)を使って描きました。
※ 確率は0〜4までの青い棒を足し合わせた数値です。
では、もっと少なく、点数が20点以下(10問中2問正解)だったらどうか。
この場合の確率は 5.5%、かなり小さな値ですが、クラスに1人くらいは出てもおかしくはない数字です。
では、点数が10点(10問中1問正解)だったら?
確率は 1.1%、これなら「おやっ?」と思える数字です。
つまり「狙っている」ことをアピールするなら、2択10問テストで10点以下でなければなりません。
もし理解度50%の人が、あえて10点以下を狙うとするなら、
その成功率は 18.6%、かなりの難関と言えるでしょう。

ところで2択の場合、青いグラフと赤いグラフには、かなり大きな重なりが見てとれます。
60点〜70点くらいの点数なら、全くの偶然であってもそこそこ当たる。
ということは、ちゃんと分かっている生徒と、ヤマカンで当てた生徒の見分けが付きにくいということです。
そこで、テストを2択ではなくて、3択問題としたらどうなるか。

赤と青が、かなり良く分かれてきました。
50点のところは微妙ですが、60点以上はほぼ「理解している」、
40点以下は「理解していない」と見てよいでしょう。
3択の場合、10点以下(1問正解以下)の確率は10%程度となります。
なので、1問正解はまだ「狙っている」とは言い難く、
狙うならずばり0点、確率にして 1.7% のピンポイントだけです。

さらに、テストの形式を5択にすると、どうなるか。

赤と青がはっきり分かれました。
このとき偶然0点を取る確率は10.7%、現実に取り得る値です。
つまり5択問題の場合、たとえ0点をとっても何のアピールもできないということです。

結論: あえて0点を狙うなら3択以下。
  先生は、少なくとも3択、できれば5択程度の問題を作った方が良い。