羽月莉音の帝国・名言集

羽月莉音の帝国」、これはすごい!
ライトノベルの体裁に「限界いっぱい意味のある内容を詰め込んだ」本。
「教科書よりも役に立ち、新聞よりも糧になり、ビジネス書よりも実用的」。

今の世の中に希望を見出せないと嘆く、多くの人たちに薦めたい。
まずは、このあとがきを見てほしい。

若い人たちの未来は確実にしぼんでいます。未来は暗い。
その多くは、いわゆる負け組と呼ばれることになる。
そんななか、若い世代に属るす方が個人として希望を見出せるとしたら、
徹底して世間と距離を置き、不断の勉強を積み重ねることだけです。
    -- 第10巻・あとがきより

■ストーリー
「来たれ、革命部へ! クーデターを敢行しちゃう部です! 最終目標は建国!」
高校生5人が革命部から会社を興し、ビジネス街道を突っ走る。
果たしてクーデターは成功するのか、新生国家建国は為るか?


以下、経済・ビジネス視点から特に印象に残った名言をピックアップしてみました。

■第1巻
* 日本やアメリカを作った人がいる。
ソニーやグーグルを創業した人がいる。
パソコンやインターネットを開発した人がいる。
モナリザを描いた人がいる。
宇宙へ行った人がいる。
何も特別な力じゃない。

*「世界ってヤツはね、たったひとりに自由を享受させるために、
100人の人間を使役するの。今も昔も、変わらぬ姿。・・・」
「世界中、幾千万の光景を見てきたわ。それで悟ったことがひとつある。
人間は悪よ――」

■第2巻
* バカな白昼夢だと思います。ですが、この世界自体がバカげたものじゃないでしょうか?
・・・最近まで、深く考えずに生きてきました。
世界には、何かとほうもない価値があるものと思っていた。
世界は、正しいものだと思っていた。
・・・ぜんぶ違う。

* 鶏が先か卵が先か――
本来は卵から徐々に大きくなっていくはずなのに、いきなり鶏を用意してしまおうという強烈な方法である。
レバリッジド・バイアウトは1970年代アメリカで完成した、企業買収のための金融技術だ。

■第3巻
* 誠実さ九五%、ウソ五%。
これが今まで体感で得てきた絶妙な配分だ。

*「統一されたあたらしい金融システムと、統一されたシンプルな税制。
そして自動的に目減りしてゆく資産。」
「目減りする資産?」
「あたらしいお金――電子マネーで実現させたい。

■第4巻
* このような駆け引きの場では、きっと言葉にしないよりも、
相手に不快に思われようと、言っておいた方が得なのだ。
もしこちらの望むラインで相手が食いついてくる可能性があれば、それが一番いいのだから。

*「経済を何倍にも膨らませる『信用創造』も、銀行の重要な役目よ。
預金をあつめて貸し出すことをくりかえすと、世の中を循環するお金がどんどん増えていくの」

■第5巻
*「悪意の大半は、善意から始まるの。」


* 証券化は、これからの金融ビジネスのメインストリーム


*「考え抜いた結果、考えないことにした。」

■第6巻
* 自由を突きつめたその先には、支配と搾取、支配者と奴隷しか残らない。


* 他人のお金を利用して儲ける単位を大きくするから、利益も損失も、その分だけ大きくなるわけだ。
これがレバリッジと言われるもので、一見クールな響きのある単語だが、
要は他人から金を借りてギャンブルをするだけだ。


* ――そうか、この人は、俺たちと同じ基準に立っていないんだ。
「――民衆のことを考えると不幸になると。そう思えて初めて、私は心安らかに生きられるようになった。」

■第7巻
* 『人はインセンティブに反応する』。残りは注釈にすぎない――


* 戦争とは、兵器を使うだけが能ではない。


* なによりロシアがすごいのは、近代では『ザ・グレートゲーム』を通してイギリスと覇を競い、
現代では『冷戦』を通じてアメリカと覇権を争い、常に近現代世界史の主役であり続けたことである。

■第8巻
* 言論には自由があると民衆が考えているうちは(本当に自由なのかは別として)、
ネットの意見が皆の共通認識になることは絶対にありえない。
・・・ネットはメディアのヒエラルキーのなかでは最下位であり、
おばさんたちの井戸端会議レベルのシロモノである。

* 一般に、企業の株式は収益性や安定性が注目されがちだが、実はもっとも有用で重要なものがこの「流動性」なのである。

* 結局のところ、いくら世界すべての人間と人脈があったとしても、自分の力量に応じたものしか活かせないということだ。
人脈を広げるために、人脈を求めるのはナンセンス極まりない。

*「・・・でも、勢力均衡が保たれる世界が、本当にすばらしい世界なのかしらね。」
「ははは、すばらしい世界など、人類には不可能なシロモノだよ。
あるのはただ、その時点で分相応の世界だけだ。」

■第9巻
* 別に私たちが関わらなくとも、世界は一定間隔で、定期的にメチャクチャになる。


*「仮に世界をひっくり返したとしても、そこにあるのは同じ世界」なのだと。


* なぜ彼らはバブルを引き起こし、バブルに乗り、恐慌を引き起こしてしまうのだろうか?
その大局的な答えは、現代社会の根底でもある「利益と損失の非対称性」に見いだせる。


*「莉音がいなかったら、俺は間違いなく有象無象の人生を歩んでいたはずだ。
それがつまらないことすらわからない、そんな人生。

■第10巻
* 文明の進化と共に、戦争のスタイルも進化してきた。
『決戦方式』『総力戦』『ハイテク戦』


* テレビやパソコンのモニタを通して世界を認識するほど愚かしいことはない。
こんなものを通して社会との一体感を感じていたとしたら、それはなんて可哀想な世界を生きている人だろう。


* 綺麗な言葉を並べ立てているが、これは情報操作の基本的なタイプ――恐怖をあおる公式通りのものだった。
意図的に恐怖を煽り、事前に用意した解決策へと民衆を駆り立てる方法だ。


* 本当の権力を担うとは、かくも重大な決断を、朝起きて顔を洗うがごとく、
ごくごく自然なこととしてやらなくてはならない。

羽月莉音の帝国 (ガガガ文庫)

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10冊も読むのはしんどいな、と思っている人には、同じ作者の「雷撃☆SSガール」がおすすめ。
こちらは羽月莉音をコンパクトにしたような内容 >> [id:rikunora:20100131]
※作者:至道流星のページ >> http://ssnovel.com/
羽月莉音の帝国をひたすら薦めるエントリ >> http://b.nog.jp/?p=7502