天才ガロアの発想力

ガロア理論とは何か?
・200年ほど前、1人の天才少年が切り開いた数学の理論で、
・あまりの抽象性の高さに、当時は誰も理解できなかった。
・ところが時代を経るにつれて、その理論は次第に重要性を増してきて、
・今となっては科学を語る上で外せない基礎理論となった。
この難解なガロア理論を、何とか分からせてやるぜ、という意気込みの本が出ました。

天才ガロアの発想力 ?対称性と群が明かす方程式の秘密? (tanQブックス)

天才ガロアの発想力 ?対称性と群が明かす方程式の秘密? (tanQブックス)

ガロア理論について「お話だけで終わっている」わけでもなく、
さりとて「すごく難しい」わけでもない中間レベルの解説書。
たぶん、この本が初の試みなのではないかと思います。
* 『天才ガロアの発想力』出ました! >> [id:hiroyukikojima:20100821]
実は私、この本には少なからぬ興味と思い入れがあります。
というのは、私自身、何とかガロア理論を理解しようとあれこれ本を読み漁ったあげく、こんなサイトを作っていたからです。
* Gの夢 〜 解けない方程式の謎を解く >> http://galois.motion.ne.jp/
私は「高校生でもわかる 泥臭い群論入門」を目標にサイトを作りました。
しかし、この本は「意欲のある中学生なら読める」ことを目標に書かれています。
・・・なんか、負けたような気がする・・・(いや、最初から勝負になっていないのですが)
実際、この本に必要な予備知識は「二次方程式を理解していること」だけです。
なので、中学生でも読めるってことになる。。。現実的にはちょっと厳しいと思うけど。
とにかく予備知識が必要最小限、というアオリは間違いないと思います。

この本を読んで気付いたのは、発想の出所、参考文献が、私のサイトと大きく重なっているということでした。
それもそのはず、本の著者である小島先生のブログは、実は私のサイトのアイデアの源泉だったのです。
以前、私がガロア理論のことを知ろうとあちこち調べていたとき、偶然こんなページに引っかかりました。
* ガロアの定理をわかりたいならば >> [id:hiroyukikojima:20080327]

絶対お勧めなのが、この草場先生の本を読むことである。
これでわからなかったら、「ガロア理論は心底向かない」と諦めるべきかもしれないくらいだ。
(そりゃいいすぎかな)。たぶん、この本が、ガロアの定理までの最短距離なんじゃないか、と感じる。

ガロワと方程式 (すうがくぶっくす)

ガロワと方程式 (すうがくぶっくす)

そうか、これを読めばガロア理論が分かるのか! と思い立ち、さっそくこの本を入手。
で、一読してガロア理論が分かったのか。。。残念ながら、そう簡単ではありませんでした。
特に後半になるとかなりキツくて、ほとんど落ちこぼれそうになりましたよ。
でも、ブログには「これでわからなかったら諦めろ」と書いてある。
なので、これでダメなら他の何を読んでもダメだろうと腹をくくって、何度も見返しました。
結果的に、ガロア理論の理解に一番役に立ったのがこの本でした。
ブログに書かれていた言は、ウソではなかった。

もう1つ、同じく小島先生のブログに、ガロア理論を理解するための重大なヒントが書かれていました。
* 数学のフィロソフィー >> [id:hiroyukikojima:20081104]

複素数を考えるときにはしばしばー1の平方根を一つ決めて、それを虚数単位 i で表します。(中略)。むろん、はじめに決めたー1の平方根 i には選び方が二通りあり、しかも二つの平方根は区別がつかないので、私が決めますといった i とあなたが決めますといった i が一致するかどうか判断することもできません。しかし、 i を決めてしまえば、二つの平方根のうちどちらを i としていたかに関わらず同じ数学が展開されます。(中略)。i を決めずに議論を続けていくうちに、一方を i として決めた数学と他方を i として決めた数学が二重に重なって現れるということまで起こります。

このくだりに、ピンときた。
大げさに言えば、対称性について、何か悟りを開いたような気持ちになったのです。
 「対称性とは、区別がつかないことと見つけたり」
ここで悟った(?!)内容を、私なりの言葉で言い表してみたのが下のページです。
* Gとリンの数学夜話・第2回:複素数の形
 >> http://galois.motion.ne.jp/stories/G_Math_02.html
「天才ガロアの発想力」には、この「対称性の悟り」について、もっと平易な形で書かれています。
ここのところが読み取れれば、「わかった!」という気持ちになれると思います。

まだあります。私のサイトのタイトルは「Gの夢」です。
このタイトルは「ガロアの夢」という本から取っています。

ガロアの夢―群論と微分方程式

ガロアの夢―群論と微分方程式

ガロアの夢とは何か。それは、ガロア理論微分方程式への応用です。>> wikipedia:微分ガロア理論
「天才ガロアの発想力」の最後の章、「ガロア群論のその後の発展」は、このガロアの夢について費やされています。
本来であればとても新書のおまけに収まるような内容ではないのですが、それを最終章に持ってきた作者の意気込みを感じます。
この「ガロアの夢」について、私は半分も理解できていません。
いつか理解できるようになりたいなー、というのが生涯の目標です。

限られた予備知識の中で、できるだけ分かりやすくガロア理論をまとめるにはどうすれば良いか。
この「天才ガロアの発想力」では、とにかくキモであるガロア対応を最終目標に据えて、
そこに向けて必要最小限の道具立てを用意する、といった構成を採っています。
 ・体とは何かを説明し、
 ・群とは何かを説明し、
 ・部分群、ハッセ図
 ・複素数
 ・3次方程式が解けるからくり
そして最後に
 ・ガロアの定理、「それなり版」の証明
 ・ガロアの夢。
目標に不要なものはこの際バッサリ削って、何が必要なことなのか、注意深く考えられた章立てになっています。
ちなみに、私がサイトを作るにあたってどんな順番に項目を並べたかというと、
 ・二次方程式 -> 三次方程式 -> 四次方程式 ---> 五次方程式
ふつー、何も考えずに項目を並べていったら、こういう風になるんです。
この章立てを見ても、いかにこの本の構想が良く練られているかがわかるでしょう。

結局何が言いたかったのかといえば、
  まぁ、読めや
ってこと。
今の時点で、間違いなくこの本がガロア理論に至る最短ルートだと思います。
あと、せっかくここまで来たのなら、ついでにこっちも見ていってくれい。
* Gの夢 >> http://galois.motion.ne.jp/