ポイント使う、それとも貯める?

買い物をするとき、いろんなお店で導入されているのがポイント制度。
買った金額の一部がポイントという形で還元される仕組みです。
ポイントが還元されたときに、その場で使うか、貯めて次回以降に回すか、
選択できるお店があります。(ヨドバシカメラとか。)
「ポイントお使いになりますか?」と聞かれると、使うべきか、貯めるべきか、ちょっと迷いますよね。
さっさと使ってしまうのと、貯めるだけ貯めて一気に使うのと、果たしてどちらがお得なのでしょうか?

問題を単純化して、次の2パターンを比較してみましょう。

・商品の値段は 1 とする。
・買い物の回数は全部で N+1 回とする。
・ポイント還元率は P < 1 とする。(たとえば10%なら P=0.1)
* パターン1:まとめ型
  N回の買い物の全てでポイントを溜め、最後にまとめて使う
* パターン2:毎回使用型
  N回の買い物で、毎回ポイントを使用する。



* パターン1:まとめ型:
・ポイントで割り引かれた金額
 N回の買い物でPずつ溜まるのだから、(割引金額) = NP。
 (ただし NP < 1、つまり溜めたポイントが商品金額を超えることはないものとします.)
・残ったポイント
 今支払った金額に対しても、新たにポイントが付くものとします。
 例えば 10%割引で 1000円の買い物をしたら、100円分をポイントで支払って、
 残る 900円に対して 10% のポイントが付くというルールです。
 なので、残りポイントは 900円 * 10% = 90円分、となります。
 (残りポイント) = P * (1 - NP)

* パターン2:毎回使用型:
毎回の使用ポイントを P[N] と表記して、どのような数列になるか考えてみましょう。
P[0] = P
P[1] = P (1 - P )
P[2] = P (1 - P ( 1 - P ) )
P[3] = P (1 - P (1 - P ( 1 - P ) )
...
P[i+1] = P ( 1 - P[i] )

P[1] =
  P ( 1 - P )
= P - P^2

P[2] =
  P ( 1 - P ( 1 - P ) )
= P ( 1 - P + P^2 )
= P - P^2 + P^3

P[3] =
  P ( 1 - P[2] )
= P ( 1 - ( P - P^2 + P^3 )
= P ( 1 - P + P^2 - P^3 )
= P - P^2 + P^3 - P^4

P[4] =
  P ( 1 - P[3] )
= P ( 1 - (P - P^2 + P^3 - P^4) )
= P - P^2 + P^3 - P^4 + P^5

一般的な式 P[N] は、次のようになります。
P[N] = Σ[ i=1 〜 N+1 ]    ・・・(☆)
    Pが奇数 + P[i]
    Pが偶数 - P[i]
偶数、奇数、で交互にプラスマイナスが表れる、ということは、
使用ポイントは、実は振動しながら収束する数列だったのです。
なぜ振動するのか、仮にポイントが100%付く(P=1.0)という状況を考えてみると、理由がわかります。
1回目はお金を出して買う。2回目はポイントだけで買うことができる。
3回目はまたお金を出して買う。4回目はポイントだけで買うことができる・・・
となるでしょう。

具体的に、P=0.1(つまり10%)として、まとめ型と毎回使用型を比較してみます。
下の表で、ピンクの方が毎回使用型、緑の方がまとめ型です。
支払合計は、買い物で支払った現金の合計値。
残ポイント金額換算は、手元に残っているポイントです。
黄色いところに、2つのパターンの差額を出しています。

まず、支払った現金の比較すると、まとめ型の方が少なくなっています。
しかし、残ポイントを比較すると、反対に毎回使用型の方が多く残ります。
これは一見奇異に感じられるかもしれませんが、
まとめ型では最後の1回の買い物に、いままで貯めた全てのポイントを使っているので、
最後の1回の買い物で返ってくるポイントが少ないのです。
(最後の1回の買い物に使う現金が少ないので、それに対して還元されるポイントが少ない)
そして、支払った現金と、残ポイント金額換算を合わせて比較すると、
トータルではほんの少しだけ、毎回使用型の方が得をしています。
どちらが得かという問題の答はかなり微妙で、何をもって得とするかによって変わってくるのです。
* 支出した現金だけで比較した場合 -- まとめ型の方が得
* 現金+残りポイントまで含めて考えれば -- 毎回利用型の方が得
買い物の終わりが決まっている場合、
ある時点で全てのポイントを使い切り、それ以降は買い物をしないのだ、というのであれば、
まとめ型でポイントをため込んでいって、最後の1回に使い切った方がお得です。
そうではなくて、将来に渡ってずっと継続的に買い物を続ける場合、
毎回ポイントを使用していった方が、次回にもポイントが残るのでお得だということになります。
お店の側からすれば、お客さんにはずっと継続的に来てほしいので、
できるだけポイントはその場で使うように勧めるべきでしょう。
これは、直感的に「ポイントを貯めた方が次回も来てくれるだろう」と思うのと反対の結果です。
※ なぜかそうなるかというと、使った現金に対して必ずポイントが残るからです。
※ (ここではそういうルールで考えています)
※ 確かにポイントを貯めているうちは、お客さんは来てくれますが、
※ 貯め込んだポイントを一気に使い切ったときが縁の切れ目となるのです。

しかし、両者の差は金額の違いに直すと微々たるものです。
もし1回の買い物金額が1000円だったとすると、
割引率10%、10回の買い物の後の差額はわずか8円にしかなりません。
この程度の金額であれば、むしろ「ポイントを貯めていたけど期限が切れてしまった」とか、
「ポイントカードを無くした、忘れた」「還元率が変動した」といった影響の方がずっと大きいでしょう。

さて、毎回使用型の使用ポイント(☆)がどのような挙動を示すのか、グラフにするとこうなりました。

確かに、最初の3回くらいは値が振動しています。
その後は一定値に収束するようです。

せっかくなので、上と同じことを、ポイント還元率 20%で表にしてみました。

こちらのグラフの方が、振動する様子がよく出ています。
1回の買い物金額を1000円として、5回の買い物の後の差額は 27円程度。
この差額から考えると、結局のところ使うか、貯めるかは、
その場のフィーリングに任せても良いのではないでしょうか。