歪んだサイコロ

サイコロというものは、1から6までの数が均等に出るのが普通です。
なぜ均等になるかと言えば、サイコロの6つの面が全て同じ形だからです。
それでは6つの面が同じではない、縦横の長さが違っている形だったら、
出る目の確率はどうなるのでしょうか?

とりあえず思い付く予想は、こんなところでしょうか。
予想1.出る目の確率は、床に接する面の立体角に比例している。
予想2.重心の高さが低いほど、より安定するので目が出やすい。
しかし、この予想1と2でも、結果は食い違ってきます。
真実はいかに、ということで、手頃な材料を転がしてみることにしました。

私が選んだ材料は「トイレットペーパーの芯」です。
・いろいろな長さで切りとって試すことができる。
・中に粘土を詰めて、重さを変えて試すことができる。
これで、予想1、2を確かめることができます。
トイレットペーパーの芯の直径は、測ったところ4cmでした。
そこで、今回は
・直径よりも短い、高さ 2.5cm の円筒
・直径と同じ、高さ 4cm の円筒
・直径よりも長い、高さ 5cm の円筒
の3個を用意しました。
それぞれの円筒を100回ずつ投げて、立つか、転がるかを数えてみました。
これを3回繰り返しました。
次に、それぞれの円筒に粘土を詰めて重くして、同じように投げて立つか、転がるかを数えました。

* 結果 -- 100回のうちに円筒が立った回数.

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空の芯:  2.5cm | 4cm | 5cm
1回目:  58 | 28 | 24
2回目:  59 | 34 | 16
3回目:  65 | 29 | 24

                                                                                            • -

 平均:  60.7 | 30.3 | 21.3
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粘土入り: 2.5cm | 4cm | 5cm
1回目:  52 | 25 | 12
2回目:  48 | 44 | 19
3回目:  59 | 32 | 8
4回目:  67 | - | -

                                                                                            • -

 平均:  56.5 | 33.7 | 13.0
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粘土入りの2.5cmだけ、実験回数が4回となっています。
これは特に2回目で予想に反した回数が出てきたので、
疑わしく思ってもう1度だけ試してみたものです。
(ホントはこういう手心は加えない方が良いのですが、せっかくなので入れてみました。)

* 円筒の重さ
空の芯:  2.5cm | 4cm | 5cm
      1.5g | 2.5g | 3g
粘土入り: 2.5cm | 4cm | 5cm
      33g | 53g | 67g

まずは予想1.円筒が立つ確率は立体角に比例する、を検証してみましょう。
立体角というのは、球面全体に対して色の塗ってある部分の面積の比率のことです。

円筒が床に落ちたときの角度が、この範囲に入っていたら、
きっと円筒は立つのではないでしょうか。
 2.5cm:Cos[ ArcTan[ 4 / 2.5] ] = 5/√89 = 0.53
   立体角は 2π(1-0.53) = 0.47、球面全体の24%、上下2面で 47%
   => 予想、47回
  4cm:Cos[ ArcTan[ 4 / 4] ] = 1/√2 = 0.71
   立体角は 2π(1-0.71) = 0.29、球面全体の15%、上下2面で 29%
   => 予想、29回
  5cm:Cos[ ArcTan[ 4 / 5] ] = 4/√41 = 0.78
   立体角は 2π(1-0.78) = 0.22、球面全体の11%、上下2面で 22%
   => 予想、22回

この予想は、空の芯の 4cm, 5cm と、粘土入りの 4cm には当てはまっているように見えます。
しかし、2.5cm は予想よりも多いですし、粘土入りの 5cm は予想よりも少ないです。

次に予想2.重心が低いほど安定するのではないか。
この予想は、5cmの円筒には当てはまっています。
5cmの場合は、重い方がより多く倒れる=安定する傾向にある。
しかし説明が付かないのは、2.5cm の方です。
もし安定した方が出やすいのであれば、粘土入りの方がより多く立つはずです。
(2.5cmの円筒は、直径よりも高さが低いので、立ちやすくなる)
しかし、結果は逆になっている。これはどうしたことか。

2.5cmの円筒については、予想1,2だけでは説明が付きません。
思い当たる理由と言えば、円筒を投げたときの回転くらいです。
2.5cmの円筒は、ちょうどてのひらにすっぽり入る大きさで、
投げる際に円筒の軸を中心に回転しやすいように感じました。
回転がかかると、円筒が床の上をタイヤのように転がって、
結果として横に寝た状態としてカウントされます。
要は 2.5cm と 5cm では投げ方の癖が違っていて、
回転のかかり具合に差があるのではないかと。

結果を見ればわかるように、確率は立体角だけで決まるわけではなく、重さも関係しています。
なので、出る目の確率には少なくとも
  (立体角) + (重さ) + (回転か何かの要因?)
が効いていることになります。
これは思ったよりもずっと複雑な問題でした。
空の芯の方が立体角に合っているようにも見えるので、ひょっとすると
・重量が無視できる場合 => 立体角
・重量があると => それに重さの補正が加わる
のではないか、などと思ってみたりしました。
。。。オチが無くてすまんね。いつも上手く解けるとは限らないのだ。