経済物理学からの提言

ソニー 寄附講座 公開シンポジウム09 これからの地球環境と経済」
という公開講座を聞いてきました。
* こちらのページにバナーがあります >> http://www.kll.keio.ac.jp/
いずれもおもしろい話ばかりだったのですが、
特に印象に残った高安秀樹先生のお話をメモしておきます。
(個人的なメモなので、不正確なところがあるかもしれません。
いずれ上のサイトに動画が掲載されるそうです。)

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* 3Eトリレンマ
1: Energy -- エネルギー
2: Economy -- 経済
3: Environment -- 環境
これからの地球は、この3つの相反する要求をバランス良く満たさなければならない。
3つは同時解決しなければならないのだが、中でも経済はテコ入れできるところが多いのではないか。
「経済=お金」ではない。もともと経世済民、世を治め、人を救済することだった。

* なぜ、お金が要るのか?
お金とは、
 「社会が保証する、ひとりひとりの自由な行動の量」
のこと。みんな自由が欲しくてお金を手にしたいのだ。

* 経済成長とは、みんなそろって一斉に世の中が良くなる、というイメージがあると思う。

ところが、現実はそうなっていない。
たくさんの会社の成長の様子を調べてみると、こんな風になっていた。

ほんの一握りの運の良い会社が、想像を超えるような勢いで急成長する。
それ以外の会社は、ほとんど変わらず、もとのままの位置にある。
成長とは、このような姿で為されていたのである。

* 成長はいつまでも続かない。
現在の世界は、すでに身長の伸びが止まったまま、体重だけが増え続けているメタボ状態だ。
リーマン・ショックへの公的資金注入は、心臓病で倒れた患者に手術を行ったようなものだ。
またいつ再発してもおかしくない。

* 根本的なところから見直さねば。
結論から言えば「金利」を何とかしないといけない。
従来、金利と言えばどこでも常に一定の割合で増えてゆくものだった。
これを、返済期間の業績に応じて返すようにしたらどうだろうか。
つまり、成長に応じて返すということ。
大半がほとんど成長しなくても、一部の大きく成長したものが大きく返して、
全体のバランスを取れば良い。

* この業績に応じて返すシステムであっても、銀行は潰れたりはしない。
仮に破綻率2%として見積もっても大丈夫。
ただし、この方式の場合、金融業界はおいしくないのでがっかりだ。
でも、メタボになったら甘いお菓子は控えるではないか。

* 人類最大の発明は E=mc^2 ではなく、複利を記述する指数関数である
-- アインシュタイン

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いろいろ思うところがあります。
お金とは「自由な行動の量」のことである、という定義は、目から鱗でした。
今の日本ではなんだかんだ言っても、まだ不景気で餓死者続出というニュースを聞いていません。
それでもお金が問題になるのは、食えるかどうかではなく、自由かどうかを問うているからでしょう。
また、問題の中心が「金利」にあるのだという認識を新たにしました。
理屈で考えてゆけば、自然にそうなるのだと思います。
* 経済がわからない >> d:id:rikunora:20090808
* お金の要らない世の中 >> d:id:rikunora:20080420
では、金利をどうすればいいのか。
いっそ無利子にすべきなのか。現状からすれば、それはほとんど不可能でしょう。
上の提言のように、大きく成功したものが大きく返す、というシステムは合理的に思えます。
そうなれば、みんな失敗を恐れず何かやってみようと考えるのではないでしょうか。

同じシンポジウムで話された西成活裕先生は、
 (利益の配分は)「かわりばんこしかない」
と言っていました。(この先生の話もメチャおもしろい!)
力学系というものは、最終的には
 ・一定になるか、
 ・発散するか、
 ・振動するか、
のいずれかに落ち着く。
この3つから選べと言われれば、振動が良いではないか、ということなのです。
なるほどと思いましたが、では実際にどうやって「かわりばんこに」譲り合うのか、
具体案が思い浮かばないですね。