トイレ空間

昔から考え事をするのに良い場所は「枕上、馬上、厠上」だと言われている。
寝床、馬に乗ったとき、そしてトイレだ。
現代では馬に乗るチャンスは滅多にないけれど、確かに、寝床とトイレは考え事にふさわしい場所だろう。
そんなわけで、我が家のトイレには「うんうん唸って考える」ための張り紙がいろいろと貼ってある。
まずトイレに座って右手、ドアを開けると正面に見える壁はこうなっている。

写真中央は、荘子の「混沌死せり」。もちろん、湯川秀樹にあこがれて貼ったものだ。
その下に隠れて見えないのは「胡蝶の夢」。
背後にあるのは、小さな数の読み方。
なぜか「水金地火木・・・」が書かれている。でも、冥王星はもう惑星じゃない。

読めるかな? 不思議なことに、トイレに貼ったものはけっこう良く覚えられる。

背後の壁いっぱいに貼ってあるのは、大きな数と、小さな数の読み方。
左端の無量大数を見ると、雄大な気分にひたれる。
小さい方の右端は・・・虚空、清浄、で終わる。
終わり方が美しい。。。トイレなのに。

数の大小の右隣にあるのは、マンデルブロー集合。
我が家では「尻、尻の絵」と呼ばれている。
確かに、尻っぽい。トイレで見るとなおさらそう見える。
その右には、よくわからないアートが貼ってある。
黒い紙に絵の具をぶちまけたもの。なんとなくきれいに出来たので貼ってみた。

手洗いの裏にあるのは、アジアの古地図。
もちろんレプリカ。タイのおみやげにもらったもの。
その下には、なぜか正規分布の説明が貼ってある。

便座に座ると、正面に見えるのは元素周期表のポスター。
よく見ると、いろいろゴチャゴチャ書いてあるのだが、
一番気になるのは左端に「一家に1枚周期表」と書かれていることだろう。
写真だと、紙がめくれてよく見えない。
元画像はここにある。
>> http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/week/shuki.htm
周期表の下にくっついているのは、永久機関の図。
背後の棚の中は、マンガで埋まっている。
右手に立てかけてあるのは「北斗の拳」、これを読むと熱くなって、つい力んでしまう。
マンガを読んで、ふと目を上げると、歴代ノーベル賞を取った先生方と目が合う。
「ほう、君またマンガかね。」と言われているみたいだ。
でも、湯川博士と小柴博士は、そんな俗世間事には一切頓着せず、遠い宇宙に目がいっている。
さすがは混沌である。

というわけで、この狭いトイレ空間に立てこもると、なぜか宇宙が見えてくる。
でもあまり長い間宇宙に思いを馳せていると、ついトイレが長くなってしまうので注意が必要だ。