ガロア最初の論文

ガロアのことを調べていくうちに、彼が最初に書いた論文というものを見つけました。
ガロア17歳、今で言えば高校生のときの論文です。この本に載っていました。

ガロアと言えば群論で有名ですが、まともに群論を理解するのは、一筋縄ではいきません。
* Gの夢 >> http://galois.motion.ne.jp/   (宣伝!)
この最初の論文も難しいのかな、と思って眺めてみたところ、
格別難解ということもなく、しかもちょっとおもしろい内容だったので、以下にご紹介します。

ガロアがこの論文で主張しているのは、次の定理です。

任意次数の方程式の一つの根が純循環連分数で表されるならば、この方程式は必ず次のように表されるもう一つの根を持っている。
その根は -1 を最初の根で割ったものに等しく、やはり循環連分数で表され、その循環節の数字の並び方は最初の連分数のちょうど逆になっている。

まず、純循環連分数とは何か。
それは、このように、分数の分母の中に分数が次々に入った形の数のことです。

「循環」というのは、この分母に出てくる数が「a,b,c,d,a,b,c,d...」のように、一定周期で繰り返すこと。
「純」と付いているのは、この循環が最初からスタートしており、
「x,y,a,b,c,d,a,b,c,d...」のようにはなっていない、ということです。
* いまひとつの連分数 >> d:id:rikunora:20090830
1つ注意がいるのは、ここで扱う方程式は有理係数の代数方程式だということです。
この仮定は明記されてはいませんが、注釈によると、この時代の論文では一般的であったとのこと。

いま、ある代数方程式の根xが、上のような純循環連分数になっていたとします。
連分数というのは、同じものが繰り返し現れるのですから、2回目以降の繰り返しはxということになります。

この分母にxを入れた式は、二次方程式になっています。
(ぱっと見にはそう見えませんが、両辺にxを掛ければ二次方程式
この二次方程式の2つの答は、どちらも、この分数で書かれた式にあてはまるはずです。
ここから先は、ひたすら式の変形です。
左辺にある文字項を、1つずつ順番に、右辺に移動してゆきます。
まず、a をもってきます。


続いて b をもってきて、、、

さらに c も移動して、、、



最後に d も移しましょう。



ごくろうさん。ここで、最初の式と、最後の式を比べてみてください。
最初の式にあったxが、最後の式では -1/x に置き換わっていて、
連分数に出てくる数は「d,c,b,a...」と、逆の順番になっていますね。
これが最初に掲げた定理の内容です。

論文では、さらに次のことが示されています。
1.二次方程式の2つの実根の、一方が1より大きく、もう一方が 0と -1の間にあったなら、
  この2つの実根は純循環連分数で表される。
2.循環節が対称になっている純循環連分数は、A x^2 - (A^2 -1) x - A = 0 という形の二次方程式の根になっている。
  逆に、a x^2 - b x - a = 0 (a,b は任意の正の数)という形の二次方程式の根は、純循環連分数で表される。
“循環節が対称になっている”というのは、「a,b,c,c,b,a」のように、文字項が回文になっているということです。
回文になっていれば、逆順に並べても同じになりますから、
二次方程式の2つの根は、Aと -1/A といった形になります。
なので、もとの二次方程式は (x - A)(x - 1/A) = 0 という形になる。
あとの詳しい証明は省略。
興味のある人は、もとの論文を見るなり、自力で考えるなりしてくれい。

この論文を見ていると、ガロアが式の形、対称性といったものに注意を向けていたことが見てとれます。
きっと、こんな風に「美しい形の式」をあれこれいじっているうちに、群論の構想ができあがっていったのでしょう。
もし今、こんな内容のレポートをふらりと持ってくる高校生がいたら、正直ビビりますよ、私は。

WEB上を検索したところ、ここで最初の論文が紹介されていました。
* 数学って面白い!? -- エヴァリスト・ガロア
>> http://blog.livedoor.jp/enjoy_math/archives/51224338.html
ガロアの誕生日は10月25日だったのか。