統計の入門書
世に統計の入門書と呼ばれるものは、たくさんあります。
私の手元にも、何冊かあります。
きっかけは、このサイトを作るときに集めたのですが、
* ミクの歌って覚える統計入門 >> http://miku.motion.ne.jp/
その後も半分趣味で、なんとなく増えています。
なぜこんなに統計入門がたくさんあるのか。
・世の中には、嫌々ながら統計処理をしなければならない状況が多い。
・1冊だけで全てをカバーするのが難しく、数冊は必要。
・そもそも統計というものは、解りにくい。
などなど、幾つかの理由があると思うのですが、最大の理由は
・特に必要はないのだが、なんとなく同系列のモノを買ってしまう(人がいる)
からではないかと。
私自身がそうだから、という、それだけの理由なのですが。
クラシックのCDとか、別演奏の同じ曲を次々に揃える人っていますよね。そんな感じ。
せっかく統計入門が何冊かそろっているのだから、ここにレビューを書いておきたいと思います。
■ 超入門 --------------------------------------
●No1. マンガでわかる統計学
- 作者: 高橋信,トレンドプロ
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2004/07/01
- メディア: 単行本
- 購入: 156人 クリック: 1,757回
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「萌え学習マンガ」の火付け役。(火付け役は"もえたん"?!)
第1章 データの種類をたしかめよう! から始まって、
独立性の検定(χ二乗検定)ができるようになるまで。
マンガという限られた条件の中で、最低限これだけは外せない、といったツボをよく押さえている。
それなりに読めるし、それなりに為になるし、それなりに萌える! 絶妙のバランスです。
・表紙から想像する以上に、内容がしっかりしている。
・内容とマンガがちゃんと1つになっていて、乖離が少ない。
あえて悪い所を挙げれば、
・さすがにこれ一冊だと浅い、内容そのものは少なめ。
・表紙がちょっと恥ずかしい(電車の中とかで堂々と広げられない)
といったところでしょうか。
続編で「回帰分析編」「因子分析編」が出ています。
●No.2. 統計学がわかる ファーストブック
- 作者: 向後千春,冨永敦子
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2007/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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特色は、理論よりも実用、だと思います。
とにかくExcelシートにこうやって入力しましょう、という方法が書いてある。
内容は、χ二乗検定、t検定、分散分析まで。
これだけあれば、とりあえずのレポートには間に合うのではないでしょうか。
著者が「やさしく教えること」の専門家なので、その成果が反映されていると思います。
もとになった内容は「実際に大学の授業で使用したもの」らしい。ここにあります。
* ハンバーガー統計学にようこそ!
>> http://kogolab.jp/elearn/hamburger/
あえて悪い所を挙げれば、
・理論面には弱い。例えば正規分布の式なんてものは出てこない。
・なんとなく「大学の授業で使った教材」っぽい。
続編で「回帰分析・因子分析編」が出ています。
●No.3. 完全独習 統計学入門
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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上の2冊と比べれば、理論肌。
内容は、
・第1部: 「検定」や「区間推定」という統計学の最重要項目のゴールに最短時間で到達する
・第2部: t分布を使った小標本の検定・区間推定に最も効率的にたどりつく
順序立てて、わかりやすく、といった工夫が至る所に見られる本です。
これだけの内容を、中学の数学(ルートと1次不等式)までで盛り込んだというのは、すごい。
最大の売りは「95パーセント予言的中区間」。
著者がもともと数学の先生だった、というカラーが滲み出ています。
あえて悪い所を挙げれば、
・考え方を学ぶ本なので、そのままレポートに貼り付け、といった感じではない。
といったところでしょう。
作者のブログはこちら >> http://d.hatena.ne.jp/hiroyukikojima/
■ 入門教科書 -----------------------------------
●No.4. はじめての統計学
- 作者: 鳥居泰彦
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 1994/11/01
- メディア: 単行本
- 購入: 49人 クリック: 551回
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総合バランスのとれた、最もやさしい教科書。
代わりに同著者の書いた通信教育テキスト(非売品)が手元にあります。
それでレビューというのは全くおこがましいのですが
・その通信教育テキストが一押しの内容であること
・残念ながら、そのテキストは一般に売ってはいなくて、代わりにこの本が売られていること
・ざっと内容を立ち読みしたところ、テキストとこの本はかなり近かったこと
で、この本のレビューということにします。
その後購入しました。間違いなく良い本。
なんというか、教育的情熱に溢れた本です。
・現代の日本は、小・中・高校の数学教育で脱落者を作りすぎる。
「統計学には数学が必要だから、数学が苦手の自分には学習が不可能だ。」と思い込んでいる人もいるだろう。
・心配は全くない。君が愚者なのではなく、君に対する数学教育が下手だったのだ!
・・・(以上は通信教育テキストからの引用)
内容は、統計学とは何か、から始まって、ひととおりの分布、仮説検定、相関分析、回帰分析までカバーしています。
あえて悪い所を挙げれば、
・しっかりした教科書なので、全くの初心者が完読するには、それなりの時間がかかる。
・入門書ということで、一部の計算方法がスタンダードとは異なる。
といったところ。
●No.5 キーポイント 確率統計
- 作者: 和達三樹,十河清
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/02/22
- メディア: 単行本
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という人には、このキーポイントシリーズを薦めます。
そのキーポイントの特色がよく表れているのが、この本。
コンパクトな中に、必要な内容がわかりやすくまとまっている。
私はこれで、いろいろな確率分布の流れがスッキリと整理できました。
高校数学までがひととおりできる人であれば、この本から入るのが良いのではないかと。
あえて悪い所を挙げれば、
・微妙に薄くて、中途半端。
・ポイントを押さえているので、完全カバーではない。
●No.6 確率・統計 (理工系の数学入門コース)
- 作者: 薩摩順吉
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1989/02/08
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 90回
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私の中で、スタンダードな教科書といったら、これ。
普通の大学生は、これを買っとけばいいと思う。
基本的なことがひととおり、数式を使ってちゃんと説明されている。
「入門」と付いているだけあって、説明も親切。
あえて悪い所を挙げれば、
・理工系の教科書なので、現場での応用とか、具体例があるわけではない。
●No.7 確率・統計入門
- 作者: 小針アキ宏
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1973/05/31
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 130回
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表紙が岩波っぽくて固そうだけれど、中身は語り口調でとっても良い。
たとえ確率・統計に興味が無くても、最初の導入部だけでも図書館で借りて読む価値がある。
名著として残したい本。
あえて悪い所を挙げれば、
・よくも悪くも作者の個性が滲み出ており、それだけスタンダードから外れたところがある。
以上、下の方ほど難易度が上がってゆきます。
統計入門書をお探しの方、あなたが求めている本はきっとこの中にある。
(ちなみに、入門と銘打ってはあるが、No.6, 7 は初心者の入門、といった感じではない。)
もちろん、ここに挙げてない中にも良書はたくさんあるでしょう。
ここまで大体褒めてばかりだったので、最後に、これは無いだろうと思う悪書を。
それは、、、
●番外編 高校の教科書!
上の7冊を見た後で、いわゆる高校の検定教科書を見てみると・・・
実につまらないんだなぁ、これが。
上記の本には、それぞれに「わからせよう」という熱意と工夫みたいなものが感じられるのに、
高校の教科書には、全くそれが感じられない。
わからせようって気が、あるのか。
まあ、確かに難しいことはわかる。
いかに「わからせよう」って気があるからといって、マンガの教科書を全国配布するわけにも行かないし。
で、どうなるかと言えば、検定教科書もあって、それとは別に、わかりやすい参考書、というスタイルになる。
かくして、こんなに統計入門書が増えたのでしょう。
もし学校の教科書がパーフェクトだったなら、こんなに参考書が出回ることもなかったでしょう。
(ちなみに、比較したのはもうウン十年も以前に私が使っていた教科書です。
現在の教科書、あるいは他社の教科書は違っているのかもしれない。
機会があったら見てみよう。)
ちなみに、統計学ではないのですが、こんな記事があった。
* こんな数学の教科書が欲しかった、男子中学生が数学に夢中になってしまいそうな例題
>> http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20090412_puberty_math/
こんな教科書が、理想的、なのか?