封筒のパラドックス

前回[id:rikunora:20090423]に続いて、kashiさんからおもしろい確率の問題をいただきました。

テレビのバラエティーショーで優勝したあなたは、
賞金がもらえることになりました。
2つの箱があり、片方には他方の2倍の額の賞金が
入っていることが分かっています。
あなたが片方を選んだところ、司会者がその中を
覗いて、「こちらには100万円入っています。
もう一方に変えてもいいですがどうしますか?」と
聞かれました。

A. 選んだ箱が高い方である確率は1/2なので、もう一方の
箱に入っている金額の期待値は、
50万*1/2 + 200万*1/2 = 125万
従って、もう一方に変えた方がよい。
B. 元々無作為に選んだので、どっちでも同じ。
C. (理由は知らんが)初志貫徹、元の箱のままがよい。

さて、どれが正しい?


うーむ、かなり悩みましたよ、これは。
まず考えたのは、「片方には他方の2倍」というルールを変えたらどうなるか、ということ。
たとえば「片方は他方より50万円多い」だったらどうなるか。
 50万*1/2 + 150万*1/2 = 100万
これだと、どっちでも同じになる。
ということは、2倍というルールが指数的というか、下に凸になっているのが問題なのではないか。
もし上に凸になるようなルールだったら、逆の結果が出るに違いない。
そこで、こんなルールを考えてみました。
「一方の金額を表す数字の、万の位にある“1”を“0”に置き換えたものが、他方の金額になっている」
これなら、もう一方の箱に入っているのは、110万か、101万か、0、ってことになる。
この場合の期待値はどうなるんだろう?
 110万*1/3 + 101万*1/3 + 0*1/3 = 70.3333万 でいいのかな?
それとも
 (110万*1/2 + 101万*1/2)/2 + 0*1/2 = 52.75万 なのだろうか。。。
いずれにせよ、ルールを変えれば、期待値を下げることもできるわけだ。
だが待てよ、数字を1個だけ置き換えるのなら、1100万、というパターンがあるのを忘れていた。
そこでさらに、上のルールから「万の位にある」を取り払って、こんなルールを考えてみた。
「一方の金額を表す数字の“1”を“0”に置き換えたものが、他方の金額になっている」
これだと、もう一方の箱に入っている金額が
1100万の場合も、10000100万の場合も、100000000100万の場合も、、、
つまり、期待値は無限大!ということになる。
ならばいっそ、ルールなんてものは全く無くて「いくら入っているか分からない」だったら、
やはり期待値は無限大!
もしこれが正しかったら、運良く道ばたで100万円入っている箱を拾っても、
それを捨てて、まだ開けていない次の箱と取り替えた方が必ず儲かる、ということになってしまう。。。
だから、やっぱり期待値の理屈はどこか変だ。
ということで、上の問題の答は B.どっちでも同じ。
でも、もし確実に100万円もらえるのだったら、心理的には C. かな。

さて、とりあえず答は決めたのですが、ならば期待値の計算のどこがおかしいのでしょうか?
あれこれ考えましたが、別に計算自体が間違っているわけではなさそうです。
この問題のミソは、当たりハズレの確率と、期待値がずれている所にあるのだと思います。
こんな状況に置き換えると分かりやすい。
 A,B2つの選択子があって、当たりハズレの確率はあくまでも1/2。
 もし当たった場合はプラス100万円、外れた場合はマイナス50万円。
確かに期待値はプラスですが、だからといって当たりハズレの確率が変化するわけではない。
ここでA,Bの金額を変えてみれば、期待値は如何様にでも変えることができるでしょう。
でも、当たりハズレ自体には何の影響も及びません。
もっと極端にして、A,B2つの選択子の内容がこんな風だったら、
 A:当たる確率 0.000001%、当たればプラス1億円
 B:当たる確率99.999999%、当たればマイナス10円
これだと10万人に1人が当たる宝くじのようなもので、期待値は確かにプラスなのですが、
実際にはほとんどの人が10円ずつ損することになるでしょう。

以上で大体納得できたのですが、1つだけ、妙な難問が残った。
「中身が全く未知のブラックボックスがあった場合、その期待値は?」
無限大、になるのかな?