痛い、痛すぎるお話

[注意!] 以下の文章には、痛みを伴う表現が含まれています。
そういうのが嫌な人は見ないでね。病院の話が出てくるよ。

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過去に最も「痛かった」体験は何ですか?

私の場合「水いぼ」である。
水いぼとは、よくプールなどで染る、ぷちっとした小さないぼのことである。
おそらくウィルスが原因で、やっかいなことに伝染性がある。
私は子供の頃、プールでこれを移されて、瞬く間に全身に広がった。
おなかを中心に全身に20個ほどできた。
1個1個は小さく、点のような小さなもだったのだが、やはり気持ちが悪い。
気になって掻くと、それがもとになってさらに新たな飛び火を生んだ。

当時、家の近所に外科医院があって、そこのお医者さんが私の父の旧友であった。
で、さっそくその病院に行った。
病院では、「そうかい、君が○○ちゃん(父のこと)の息子か」みたいなことを言われて暖かく迎えられた。
ベッドに寝るよう指示されて、次にお医者さんが道具箱から取り出したのは、金属光沢鮮やかにピカピカ光る「はさみ」だった。
私はこの瞬間、全てを覚悟した。
麻酔も何もあったものではない。
お医者さんは、私のお腹をおさえて、ジョリ、ジョリっと切り始めた。
もう泣きそうである。
しかし、医者は手加減しなかった。
痛がる私を全く意に介さず、一気に20個の水いぼを切り離したのである。
切り取ったいぼの肉片が、ハサミの上に血まみれになってくっついていた様子を、今でも忘れない。
病院を出るときは、内心「もう2度と来るものか」と思った。

ところが、水いぼの恐ろしいところは、簡単には絶滅しないことだったのだ。
1週間くらいすると、なくなったと思っていた水いぼが再び発見された。
今度は10個くらいである。
そこで、再び父の友人の病院へと足を運ぶことになった。
病院につくと、「おお、良く来たね」と暖かく迎えられた。
そして、横になるよう指示されて、はさみが取り出された。
私が内心泣きそうだったことは言うまでもない。
ジョリ、ジョリっと一気に切り取った。
いぼの肉片は、やはりコッテリとはさみにこびりついていた。

その後、いぼの数は5個になり、3個になり、最後になくなるまであと3回くらい通った記憶がある。
実に恐ろしい病気だ。
大人になって、最近のいぼの治療法を調べたところ、基本的には昔と変わっていないようである。
新聞で見たのだが、時間がかかっても良いのであれば無理に取るのではなく、自然治癒に任せる方法もあるようだ。
現在では、
・はさみではなく、いぼを取る専用の道具がある。
液体窒素で凍らせてから取る。
・麻酔シールを貼ってから取る。
・薬を塗ってとれることもあるらしい。
できれば薬がよかったなあ。

さて、2度と行くまいと思っていたくだんの医院には、その後も何度かお世話になった。
ある夏の日、私はビーチサンダルで走り回ったあげく、足のつま先を段差にぶつけてしまった。
激痛の後でよく見ると、親指の爪が少しめくれて、爪の中が赤黒くなっていた。
そこで、再び例の病院に行くことになった。
病院につくと、再び「おお、元気でやってるかい」とみたいなことを言われて暖かく迎えられた。
今度はいすに座るよう指示されて、次にお医者さんが道具箱から取り出したのは、でっかい「ペンチ」。
私はこの瞬間、全てを覚悟した。
医者は、少しだけ浮いた足の爪をペンチでガシッっとつかみ、ギュ、ギュ、ギューっと引っ張った。
私が泣きそうだったことは言うまでもない。
医者の道具箱って、一体何が入っているのだろう。
考えるだに恐ろしい。

痛みの程度を表すのに「痛度」という指標がある、という噂を聞いたことがある。
聞いたところでは、
・男で最も痛いのは尿道
・女で最も痛いのは出産
なのだそうだ。
尿道炎については、知人から治療の様子を聞いたことがある。
尿道の中に傷がつき、膿みがたまるので、それを消毒しなければならない。
治療には、針金の先にヨードチンキを含めた脱脂綿を用意し、それを尿道の先っちょからつっこむのだそうだ。
くうぅ、想像するだに痛い。(決して私の体験談ではない、念のため。)

さらに、「痛度」の単位は「hanage」である、という都市伝説を聞いたことがある。
・痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief
http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/method-humans.html
ページ下の方に「インターネット・チェーンメール?」とある。
それによると、
・ 1 hanage = 1cmの鼻毛を、1Nの力で、引っ張る時に生じる痛み
・ 500 hanage = 麻酔なしで虫歯を抜いたときの痛み
・ 2 〜 3k hanage = 足の小指を角にぶつけたときの痛み
・ 200k hanage =タンスの角に足の小指をぶつけたときの痛み
・ 2.5 〜 3.2M hanage = お産の時の痛みは
私の「ペンチでギュー!」は 200k hanage ということか。
ただし、この「hanage」なる単位、実はジョークなので真に受けないように。
wikipedia:痛みの基準はハナゲ

驚いたことに、痛度を測定できる器械があるらしい。
スラッシュドット・ジャパン -- 痛みのレベルを数値化する機械が開発される
http://slashdot.jp/science/article.pl?sid=07/03/28/1459212
・ニプロ:Pain Vision
http://www.nipro.co.jp/concern/item_painvision.html
画期的な機械だ。
こういった機械を見ると、
・例えば痛度200は、痛度100の2倍痛い、と言えるのだろうか。
・痛みには幾つかの種類があって、ただ1つの数字だけで痛みの全てを表すことはできないのではないか。
・同じ数値であっても、人により、気の持ち方により、痛みの感じ方は変わってくるのではないか。
といった疑問が湧いてくる。

痛度とは少々ずれるが、よくカレーの辛さについて「5辛、10辛」といった単位が表示されていることがある。
おそらくこの数字は、カレーに入れる香辛料の量を普通の5倍、10倍入れているのだろうと思う。
であれば、5辛は1辛の5倍辛いと感じるわけではない。
1つには、人間の感覚には「慣れ」がある。
2倍の刺激を得るためには、2倍以上の量を注がねばならない。
実際、音の大きさを表すデシベル(db)は、増幅率の対数をとったものである。
もう1つは、物質の濃度と化学反応の関係についてである。
辛さを感じる量が、(舌先にある感覚器官)x(辛み分子)の反応の結果であったなら、辛さは単純に辛み分子の濃度には比例しない。
この場合にも、むしろ(辛み分子)の濃度の対数をとった方が、よりよく事情を表していると思う。

痛みの測定は、カレーの辛さよりももっと複雑であろう。
感じ方とは、最終的には心の問題となるからである。
最近、とくにインターネット上では、上記の「痛度」とは別の意味での「痛み」が話題に上がっている。
「痛い」とは、言うなれば「心が痛い」ということ。
しかもどちらかといえば当人よりも、それを見ている者の心が痛い、という意味だ。
論より証拠、つい最近、私が町で見かけた「痛車」をここに掲載しよう。








  これは痛い!イタタタ・・・


この痛みを、あなたも共感して頂けただろうか。

それでは、肉体の痛みと精神の痛み、比較するとどちらがより痛いだろうか。
私は間違いなく精神であると思う。
理由は2つある。
どちらも人から指摘された理由である。
・肉体の痛みで人はめったに死なないが、精神の痛みによって人を死に追いやることができる。
・過去いじめにあった人の話を聞くと、間違いなく精神の痛みの方が重いと言う。
この話を聞かされて、私は全く反論することができなかった。
ああ、痛い、痛すぎる。


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