ハロー、エイリアン (Hello, Alien)

宇宙には、私たちの他に知的生命体が存在するか?
>> wikipedia:フェルミのパラドックス
フェルミは、もしこの銀河に多くの異星の文明が存在するならば、
宇宙船、探査機やラジオ波などの証拠が全く発見されないのはなぜなのかと問うた。」

これに対して、幾つかの反論が考えられる。
その1つは、人類のレベルはまだ未熟であって、
正式に「銀河文明ネットワーク」に参加できるまでに至っていない、という考えである。
現時点で、人類が銀河文明に参加するのは、サルが人間社会に参加するようなものである。
未だに同族間で愚かな戦争を繰り返す、野蛮な種族を「銀河文明ネットワーク」に迎えるのはいかがなものかと。
そこで、人類のレベルが銀河文明を理解できるレベルに達するまで、
「銀河文明ネットワーク」は人類のことを、密かに、暖かく見守っているというのである。

我々の想像も及ばぬほど進んでいる「銀河文明ネットワーク」は、
宇宙船、探査機やラジオ波などといった「原始的」な手段は、既に用いていない。
「銀河文明ネットワーク」の探査方法は、サルには全く理解できないほど高度に進んでいるのである。

しかし、銀河文明は人類の探査を全く行っていないというわけでもない。
一部の人間たちの脳に、直接コンタクトを行っているのだ。
その証拠に、一般人には理解不能な、宇宙からの怪電波を受信している人を時折見かけることがある。。。

あるいは、地球は銀河辺境の「手つかずの自然」が残っている最後の楽園なのだ、という考えもある。
この地球の上にも、絶滅に瀕している動物を、自然のままに保護している地域がいくつかあるだろう。
それと同じで、地球は人類という絶滅危惧種を、自然のままに保護している場所なのだ。
「銀河文明ネットワーク」では不可侵条約が結ばれていて、地球にはちょっかいを出さないのである。

こういった想像は、SFとしては非常にかきたれらるのだが、現実の信憑性としては今ひとつであろう。
もう少しあり得そうなのは、他の生命体は人類とはあまりにもかけ離れていて、根本的に理解不能だというものだ。
たとえば交信のためのメッセージを送ったとしても、宇宙人の側はそんなことには全く関心がない。
そもそも彼らは、メッセージを交信するという概念を全く持っていないかもしれない。

SFの古典的名作「ソラリスの陽のもとに」(映画ではなく小説の方)には、
そういった「人間と意思疎通ができない、不可知な生命体」の姿が描かれている。
この小説の中では、惑星ソラリスの「海」自体が1つの巨大な生命体として登場する。
その「海」で繰り広げられる「知的活動」は、我々の行うものとは本質的に異なった、
全く理解不能な代物なのである。
私としては、こちらの方が大いにあり得そうだという気がする。
あまりにもかけ離れているがために、互いの認識がかみ合わない、考えが合わない、
そもそも「考え」というものを持っているかどうかさえわからない、といった状況である。
生命体として高度複雑に発達してはいることは疑いないのだが、
発達のベクトルが人類とは全く別の方向を向いている、というわけだ。

私は子供の時分、太陽系の他の惑星に宇宙人はいるか?
というお話を聞いたことがある。
そこでは、こんな説明が為されていた。
「空気も水もなく、非常に暑い砂漠のような世界か、非常に冷たい冷凍庫のような世界である。
そんな世界に、とても生き物がいるとは思えない。」
しかし私は、この説明を聞いて、それはあまりにも早急な結論ではないかと思った。
というのは、宇宙人は我々とはもっと根本的に違っていて、空気や水が無くても生きられるし、
非常に暑い場所や、冷凍庫のような冷たい場所にも、それぞれ適応できるのではないか、と思ったのである。

例えば非常に高温な場所では、我々のような炭素系生命体はすぐに燃えてしまう。
(空気が無ければ酸化はしないが、タンパク質が変性してしまう。)
であれば、炭素の代わりに、もっと熱に強い珪素を用いたらよいのではないか。
宇宙人が必ずしも我々と同じ化学組成から成り立っている必要はない。
SFなどでしばし言及されるのは、周期表の1つ下の元素を用いた生物である。
炭素の代わりに珪素(シリコン)を、リンの代わりにヒ素を、といった具合に。

太古の地球の環境は、現在とは大きく違ったものだった。
その中を生きてきた細菌の中には、現在の我々とは異なる代謝を行うものもいる。
例えば、硫黄酸化細菌は、硫黄を含んだ温泉付近に生息しており、
硫黄化合物を酸化して得られるエネルギーで生きている。
メタン生成細菌は、アルコールなどの有機化合物から、メタンを生成する際のエネルギーで生きている。
超好熱菌と呼ばれる一部の細菌は、100℃を超える環境にも生息している。
このような細菌は現在では珍しい、異端の生物のようにも思えるが、実はそうではない。
生命誕生時の地球は現在よりもずっと高温だったので、
その当時の生物は、むしろ好熱菌に近い姿だったと考えられる。
つまり好熱菌は、我々の「遠いご先祖様」なのである。

話は少々変わるが、今日私たちが用いているコンピューターは、
シリコンチップの上に形作られた電子回路によって成り立っている。
しかし逆に、情報処理を行う機械が全て「シリコンチップ上の電子回路」なのかと言えば、答えはNoである。
シリコン以外の、例えばガリウムヒ素といった素材でもコンピュータはできる。
昔のコンピュータは、真空管やリレーで作られていた。
電子式ではなく、いっそ機械的な歯車式でもよいだろう。
量子コンピュータやDNAコンピューティング、といったものまで含めれば、
情報処理を行う機械は、極めて広範囲に渡る。

それと同様に、知的生命体を実現するハードウェアは、
地球上の生物のような、いわゆる「炭素系」でなくても構わないように思われる。
知的生命体とは何かについて明確な定義は無いが、
私は「ある種の複雑な情報処理を行うもの」のことだと考えている。
そこまで考えを広げてしまえば、この宇宙には、生命活動を行うものはもっとあってもよいように思えてくる。

まず、我々の太陽系の中で、生命活動に最もふさわしいのは「太陽の中」である。
太陽の中には、エネルギーの流れがふんだんにある。
物質の総量は、地球全体を合わせたよりも断然多い。
もし知的生命体が自然淘汰のトライ&エラーで形作られるというのであれば、
太陽全体で行われたトライ&エラーの数は、ちっぽけな地球よりもはるかに多い。
もちろん太陽の中に、我々と同様の炭素系生物が存在するとは思えない。
太陽の中に住む生命体は、プラズマの流れのパターンによって形作られているのだ。
おそらく太陽人(?!)たちは、太陽の外にある極低温の世界に、
よもや知的生命体が住んでいるなどと想像もしないだろう。
(ごく一部のSF好きの太陽人を除いては。)

生命の活動時間やスケールが、我々と大きく異なる、といったこともあるかもしれない。
たとえば、素粒子の一瞬の反応の内に、非常に複雑なパターンが生じているかもしれない。
人間が観測できないほどの瞬く間に、複雑な流れが生じ、知性が生じ、
何か深遠な哲学的思索が行なわれた後で、一瞬にして滅んでしまうのかもしれない。

あるいはもっとずっと大きなスケールで、銀河系全体は、その星々の配置パターンによって、
ある種の情報処理を行っているのかもしれない。
この「天体生命」の空間、時間スケールは非常に大きく、そして長い。
天体生命から我々を見れば、我々はほんの一瞬の間に生まれ、そして消えてゆくほどの存在なのだろう。

そう考えると、宇宙は生命で満ちあふれているようにも思えてくる。
そして、ここまで来たのだから、さらに妄想の輪を広げてみよう。

生命がいそうな場所は、もっと他にもないだろうか。
もう1つ、可能性があるのは光速限界の壁の向こう側だ。
我々を構成する通常の物質は、光速を越えて運動することができない。
こういった粒子をタージオンと言う。
光子や重力子など、光の速さで運動する粒子をルクシオンと言う。
ならば、光速よりも速く運動する粒子は無いのだろうか。
そんな粒子があるかもしれない、と想像している人たちもいる。
その人たちは、光速を超えて運動する粒子に、タキオンという名前を付けた。

タキオンはまだ実際に観測されたことがない。
なので、ここから先は仮定の上に、さらに仮定を重ねた話なのだが、
もしタキオンで構成された世界があったなら、そこにはきっと、
タキオンによって形作られた生命体が存在すると思うのである。

タキオン生命体と我々がコンタクトをとるのは、非常に難しい。
タキオン接触する物理的手段がないのはもちろんのことなのだが、
どうやらタキオン生命体の意識の流れは、我々が感じる時間の流れと逆向きらしいのだ。
つまり、あちらの世界では時間が逆向きに流れている。
我々が原因->結果、と感じるところが、タキオン世界では結果->原因となるらしい。
例えて言えば、我々が東京から大阪に向かっている旅人で、
タキオン生命体は大阪から東京に向かっている旅人なのである。
なので、意識を通わせることができるのは「すれ違う瞬間だけ」となる。
時間が共有できないので、意識を共有することはほとんど絶望的と思われる。

いずれにせよ、この宇宙に知的生命体が全く存在しない、
と断定するのは時期尚早であるように思える。
宇宙は宇宙人でいっぱいの方がいい。
第一、その方がずっとおもしろそうだ。